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散るろぐ

千載具眼の徒を待つ

忙しくなると荒ぶる人々。あの人はなぜキレてしまうのか

師走になり、気忙しい日々が続きますが、みなさまいかがお過ごしでしょう。

商業施設などで働く方々は、 これから年末に向けて、クリスマスや歳末大売出しといった、年末商戦へ突入していきますよね。

そんな中、毎年のように現れるのが「忙しくなると荒ぶる人」です。荒ぶる(あらぶる)とは、読んで字のごとく荒れることですね。

今日は、そんな荒ぶる人をご紹介したいと思います。

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荒ぶる里見さん(仮名)

「なにやってるの!お客様がお待ちになっているのよ!」

フロアに怒声が響きわたります。

彼女の名前は里見さん(仮名)。日頃は寡黙で慎重派、でも要求はハッキリ言うタイプのスレンダーな女性です。

ところが、いったん忙しくなると歯止めが効きません。特に年末年始で忙しくなると、毎日きりきりしています。

「何年やったら覚えるの?」
「子供でもしない間違いね」
「役に立たなくてもいいけど、邪魔にならない所へいってもらえる?」

今日も、そこそこ忙しく、里見さんの厳しい言葉がぽんぽん飛び出します。

ひどかったのは、新しいパートさんがセロテープの台を落としてしまったときです。テーブルから落下した、セロテープの台はプラスチックです。

角が欠けて、少しひび割れてしまったのですが、普段なら、テープで補強して使うか、直らなければ雑費で補充します。里見さん自身も、何度か落としたことがあったように思います。

ところが、それを見た里見さんは、言いました。

「壊れたのは仕方ないわね。今からその破片を全部拾って、社長のところに、"私が壊しました"と言って、持っていきなさい」

僕はギョッとしてしまいました。

なぜなら、今まで同様のことがあっても、そんな報告をしたことは一度も無かったからです。おそらく、する必要もないのですが、荒ぶる里見さんを、誰も止める事ができません。

僕は、心で血の涙を流しながら、壊れたセロハン台を拾って、袋に入れるパートさんを見て見ぬふりをしました。ヘタに手伝うと、こちらの身もあぶないからです。


思うに、里見さんはきっと、忙しさでイライラして意地悪になってしまったのです。「忙」という字は、心を亡くすと書きますよね。きっと、里見さんも、忙しくなると、心を亡くされてしまうのでしょう。

しかし、前任の店長は、どんなに忙しくても笑顔でした。僕が辛そうにしていると必ず声をかけてくれましたし、パートさんが対応に困っていると、すぐに駆けつけて変わってくれました。

僕たちはいつしか、長たるものは、そうある物だと思いこみ、後任の里見さんにも、その理想像を重ねてしまっていたのです。

初めは良かったのです。

比較的整った顔立ちで、スタイルも良い里見さんに、僕はちょっと恋したくらいです。ところが、ちょっと忙しくなると、里見さんは豹変しました。はじめてあの怒声を浴びたとき、僕らは全員、度肝を抜かれたものです。


心に余裕がない

おそらく里見さんは、真面目であるがゆえに、自分にも、そして他人にも厳しく当たってしまうのです。それに、忙しくないときは、とっても良い人なんです。

しかし、バックヤードでは、バツイチで旦那には逃げられた、すっぴんでファミチキを買っていた、ヨレヨレの下着をつけていた、おじいさんと手をつないで歩いていた、なんて、根も葉もないウワサが飛び交っています。

そうゆうのが、里見さんを一層、頑なにして、彼女を暴君にしていたのだと思います。

それがぜんぶの理由ではないのですが、僕はそこを数ヶ月で辞めてしまいました。そのあと、ほどなくして、里見さんも退職したと聞き、やはり…という印象でした。

それ以来、僕は、自分も荒ぶらないように気をつけています。みなさんは、忙しくなると荒ぶる人ですか? 荒ぶらない人ですか?

誰も荒ぶらない世の中になることを、僕はお祈りしています。