給料に源泉徴収票が入っていたよ。その紙に「支払金額」という項目があって、そこに"3012704"の数字が並んでいた。
そうなんだ。僕もとうとう300万円プレーヤーになったんだよ。
思い返せば、初任給は13万2千円。初年度の年収は200万にわずかに手が届かなかった。あれから考えたら100万アップだからね。僕も豊かになったもんだよ。アハッ。
だけど何かおかしいんだ。あのころイメージしていた年収300万が、やけに少ない気がするんだ。
年収がまだ220万〜250万のころは、これが300万になれば幸せになれると思っていた。結婚して子供を育てて、大きな黒い犬を飼えると思っていた。あるいは岡田斗司夫のように女の子をカジュアルに着替えられると信じていた。
ところが実際の300万は300万ではなかったんだよ。300-200=100というように単純ではなくて、いろいろ税金が取られて、何かよくわからない法則でそれはみるみる間に溶けて、気がつくと60万くらい目減りしていた。
60万って月々に分けてしまうと5万円だよ。つまり手取りの13万が、18万になった。それだけだった。おかしい。増えた手応えがぜんぜん感じられない。
これでもし結婚して親子3人で暮らすとしたらどうなると思う?
家賃・水道光熱費に7万、食費に6万。もうこの時点で13万消えているよ。
それから、車の維持費、通信費、子供の学費、医療費…。5万で足りるのかな。もしも友人が結婚して招待されたら大変なことになるよ。そういえば服は着替えないのかな。今着てるコートでも6万円はしたはず。
それでも僕は半袖に短パンでも構わないよ。服には興味もこだわりもないからね。でも大好きなお嫁さんと子供は平気かな。母と子がお揃いのジャンパースカートで一年中すごすなんてことはないよね。
バカな。
あるはずがない。そんなことがあるはずがないよ。そうだ。夫婦で協力すればお金の心配はない。 お嫁さんは働きにでるんだ。家計の足しなんていうスナックジョブじゃなくて、フルタイムでガッツリと働くんだ…。
それから、ごはんを作って、子供の世話をして、町内会のゴミ拾いして、洗濯をして、お金の計算をして、お布団をしくよ。僕だってがんばるよ。365日フル稼働だ。アハッ。
彼女には、自分で使えるお金と自由な時間は無いけれど、本当は幸せなんだよ。心はいつも自由なんだ。たとえ周りから憐れみの目で見られ、いつも同じケミカルウォッシュのジャンパースカートを履いていたとしても。
いや、そうじゃない。結婚ってそんなもんじゃないよ。おかしい。年収300万はもっと偉いんだ。僕は300万円プレーヤーなんだ。
おかしい。おかしい。狂ってる。
僕はまっとうに生きてきた。誰にも迷惑なんてかけちゃいない。地道にコツコツやってきたんだ。
それなのに、この世界は、僕が何か欲しがるといつも急に狂いはじめるんだ。
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