ここ数年、僕は社会を憎んできた。上がらない給料、理不尽な要求、低所得な僕を見下し、会話もしてくれない女の子たち。
そのすべてが憎かった。
なぜ、僕よりあとに入社した、経理のバアさんが、事務所のイスでデカイ面をしてふんぞり返っているのだろう。
なぜ、僕ばかり仕事が多いのだろう。たいして給料も変わらないのに、なんでも出来る僕にばかり作業が降ってくる。
なぜ、女の子たちは、僕の食事の誘いを断るんだろう。良い車に乗っていないから? 給料が安そうだから? ちくしょう!
僕はもう、なにもかもイヤになっていた。思い通りにならない社会を呪い、正しく僕を評価しない世界を、粉々に粉砕したくてたまらなかったんだよ。
でも、きのう、フと思ったんだよ。
みんなが僕を見下したり、ちゃんと評価してくれない理由。それは僕が、雑魚(ザコ)だからじゃないかって。
だって、本当に会社がダメなら、自分で起業して、ユニクロの柳井さんみたいにやればいいじゃない。スタートトゥデイの前澤さんみたいに、60億でバスキアを落札すればいいじゃない。
できない?
それは、僕が雑魚(ザコ)だから。
女の子が振り向いてくれないのは、僕にチカラがないからなんだ。知力も権力も、何もない男に、なんのメリットがあるんだ。
そうだ、僕は雑魚(ザコ)なんだ。
朝、目が覚めて、それに気がついて、洗面所へ行って顔を洗った。そして、鏡に映る自分へむかって言ったんだ。
おまえは雑魚(ザコ)だ、と。
そしたら、なんかスッキリした。
アタマのなかにあった、あついモヤがパーっと晴れて、視界がくっきりしたね。そうなんだよ。なんでそんな基本的なことを忘れていたんだろう。そうなんだよ。いろいろダメなのは、僕がザコだらなんだ。
いつの間にか、僕がちゃんとしてるって錯覚してたけど、僕はザコなんだ。だったら、雑魚はザコなりの戦い方があるじゃないか。
綺麗事じゃなく、泥臭くやれよ。
理想じゃなく、手を汚せよ。
ザコのくせに、正攻法で勝てるワケない。
僕はザコだ。
ザコらしく生きるぞ。