こんなに雪が積もったのは、いつ以来かな。吹雪というほどじゃないけど、こんな日に配達の車を運転するのは大変だよね。
去年の5月、うちの会社にはいった配達の男の子は、ずんぐりして背が低く、眼鏡の奥に小さい目をぱちぱちさせた、真面目そうな29歳の男の子だった。
長距離トラックの運転と、コンビニのアルバイトしか経験がないという彼は、ほかに募集してる会社が無かったから、という雑な理由で僕の働く職場へやってきた。
べつに、時間通りに出勤して、あたりまえに配達してくれれば、誰でもいいから、僕は「よろしくね」と言って、初日に2回ほどおなじルートを回ってみせて、あとの配達はすべて彼に任せている。
風俗通い
僕は、お昼休みになると機械のスイッチを止めて、彼女の作ってくれたお弁当をひろげる。ふだんは、ひとりで食事しているけど、その時間に彼が配達から帰っていれば、一緒に食べたりする。彼には、同じ年の彼女がいると聞いていたけど、お昼はいつも、コンビニ弁当かカップラーメン(あるいはその両方)を食べていて、しゃべる話題はたいてい風俗店の話だった。
彼の部屋には彼女が頻繁に来るので、デリバリーは頼みにくく、通うのはもっぱら、駅の裏の風俗街で、若くて子供のように華奢な嬢が好みらしい。
この悪癖が原因で、いつも金欠になるんだって。教訓。貯金ゼロで借金する男子は、慢性的に風俗店へ通っている。
ラーメン中毒
配達の彼が、お昼に帰社しないときは、たいていどこかのラーメン屋で昼食を食べている。イチオシは海龍という豚骨ラーメン屋で、あの脂がたまらないらしい。他にも、美味しいと話題のラーメン屋さんがあれば、博多や久留米、鹿児島まで食べに行く。ラーメン1杯のために、高速道路の往復料金まで払っているから、とうぜんコスパは悪い。
でも、食べたい!と思ったら、いても立ってもいられずに、車を走らせてしまうという。教訓。貯金ゼロで借金する男子は、おもに外食でラーメンばかり食べている。
コンビニ通い
休憩時間や、会社帰りにコンビニへ寄ると、僕はタバコとコーヒーくらいしか買わないのだけど、彼はわけの分からないキャラクターグッズの食玩や、意味のわからない文房具が混じっていて、毎回支払いが千円をこえている。彼が稼いだお金だから、何に使おうが僕には関係ないのだけど、見ているとカルチャーショックに匹敵する新鮮な驚きがある。教訓。貯金ゼロで借金する男子は、毎日コンビニで食玩を買っている。
週刊誌
コンビニで思い出したけど、彼のカゴには必ず、ジャンプ、マガジン、サンデー、ヤングジャンプ、風俗情報誌などの雑誌がはいっている。「それってスマホで見れるんじゃないの?」と思うけれど、義務のように買っているので、あえて指摘はしない。でも、それじゃ貯金とか無理だよなと思う。教訓。貯金ゼロで借金する男子は、紙の雑誌を買っている。
毎月1万円の借金
僕は他人の生き方にケチをつけられるほど、えらくないけど、彼女がいるのに風俗へいく神経がわからない。風俗嬢に含ませたモノを、次の日には彼女に…なんてひどいよ。それなのに、彼にふつうに彼女がいて、パッと見は好青年っぽく見えるのが怖い。ラーメンや雑誌は、趣味趣向の範囲にしても、計画性のないお金の使い方を見ていると、お金が足りなくて貯金ゼロなのもしょうがないと思う。
うちの会社の給料日は、月末締めの25日払いだから、毎月20日くらいになると、彼の財布はカラッポになる。
そこで僕は、給料日かその翌日に、ラーメンを1杯おごってもらうのを条件に、1万円を渡している。そして、給料日には、貸した1万円を返してもらって、お礼のラーメンをご馳走になるんだよ。
ラーメンは1杯650円で、替え玉は150円だから、800円をゴチになっている。つまり、貸した1万が、たった3日で8百円の利息がついてくるんだよ。これを毎月やっているから、僕はなかなかの投資家だと言える。
彼は、自分が7万円を借りて、すでに5千6百円の利息を払ったことに、気がついているだろうか。もしも返さない場合は、給料を差し押さえてもらうから、リスクヘッジもカンペキなのさ。
フハハ。
女の子は、もしもじぶんの彼氏の貯金がゼロだったり、借金をするようだったら、気をつけた方がいいよ。
そんじゃーね