やれやれ。またケンカになってしまったよ。
僕たちはいつもそうなんだ。彼女とドライブに行くと毎回大喧嘩してしまう。
ことの発端は、僕がコンビニに行きたかったこと。
運転は彼女がしていたから、僕は「コンビニあったら寄ってね!」って、ハッキリ言ったんだよ。
それが9時。
そして走ってると10時になって「あ、あそこにローソンがあるよ」って、内心思いつつも、ずーっと我慢してた。
運転中に横から指図したら危ないからね。
で、通り過ぎてしばらくして、「コンビニ寄ってね」って、またやんわりお願いした。
彼女は「いいわよ」って言って、じゃあ、なんでさっきのローソンスルーしたんだよ、とか、内心思ったけど、口には出さなかった。
それから、ファミリーマートと反対車線のローソン、2つのセブンを通り過ぎたから、僕はもう一度念を押したんだよ。
「ごめん、コンビニあったら寄ってもらえる?」
もしかしたら、タイミングとか交通状況で寄れなかったかも知れないよね。だから僕は、あくまでお願いベースで頼むんだよ。
彼女は「うん。わかってる」って言った。
わかってるってなんだよ。完全に忘れてたのか、それとも僕がコンビニを見逃したことを責めてるとでも?
冗談じゃない。僕はそんなふうに思っちゃいないし、口にも表情にも出してないじゃないか。
あ!ファミマがあった。よかった!
ブォーン...........
はぁ?なんで通り過ぎたんの?
チラっと彼女を見ると、何事もなかったような顔をしてる。まるでファミマなんか存在しなかったとでも言うように。
「ねぇねぇ、次のコンビニ寄ってね!」
僕はもう、哀願のトーンでお願いした。謙虚にお願いしたんだよ。
彼女は、相変わらず「いいわよ」って上機嫌なんだよ。鼻歌までうたって楽しそうにしてる。
僕はそんな雰囲気を壊したくなかった。彼女の悲しむ顔なんて見たくないんだ。初めての夜に誓ったように、この笑顔を一生守ると決めたんだ。
そして、車が、眼前に迫ったセブンイレブンの看板と、巨大な駐車場を華麗にスルーしたとき、僕のこころは、怒りとも悲しみともつかない、不思議な感情に満たされた。
時計は12時をすぎていた。
「あのさ、コンビニ寄ってって言ったよね」
「え?ああ。ここら辺ないわね....」
だから言ったの!
街をぬけたらコンビニ見つからないから、出かけてすぐに言ったんじゃん!
「出かけるとき、言ったよね。コンビニ寄ってって」
「この先もう無いかもしれないわね...」
「だから寄ってって言ったの!なんで3時間も無視するの!」
それから、車内には鉛のように重苦しい空気が漂って、空はこんなに青いのに、僕はなんでこんなに悲しいんだろうなんて、思って。
もう、彼女とは絶対にドライブに行かないもん
そう誓ったんだ