ちるろぐ

ここが僕のアナザースカイ

宙ぶらりんのオティンティヌス

まだ、肌寒くなったといえるほど、気温は下っていないけれど、夏の火照りはすっかり冷めて、風は秋色を帯びている。

ほんの数日まえは、勢いよく茂っていた雑草も、心なしか痩せていて、緑が薄くなっている。空は980パスカルの低気圧が近づいているせいで、週末の天気は大荒れらしい。

月曜日にすべって転んだ肩が痛む。今朝おきたら腰や手首にまで違和感があって、打ってしまったのは肩だけじゃないと知った。

「そのうち良くなるさ」

誰にともなく呟いて、痛めた肩に手をあてる。ここ何年か、腰、両膝、二の腕、そして肩と、身体を痛めることが幾度もあった。そこから学んだのは、すぐには治らないこと、そして悲観的にならないこと。

その二つを受け入れたなら、それほど気に病むこともない。どんな痛みも時間が解決してくれる。僕はそれを「そのうちの法則」と名づけて、いつも懐に抱いている。

「そのうち、そのうち」

思わず二度見してしまうような、色の白い美人とすれ違う。こんな田舎にも、可愛い女の子は、履いて捨てるほどいる。

そんな彼女たちの心を奪うのは、決まって薄っぺらいiPhoneだ。田舎にはiPhoneより夢中になれる異性などいない。

あの子はきっと、iPhoneをくわえて生まれ、iPhoneと共に育ち、iPhoneに青春を捧げ、iPhoneと卒業し、iPhoneと愛し合い、そしてiPhoneを抱いて眠る。来年の今ごろには、iPhone8を出産しているだろう。

宙ぶらりんの、オティンティヌスは、無垢な二次元に救いを求め、ツンドラのティンポノフスキーは、金で温もりを買う。


ああ、無情