ちるろぐ

ここが僕のアナザースカイ

NEC PC9801

16才の僕が、あの重い液晶ディスプレイをどうやって運んだのだろう。

Sの家から自宅までは、歩いて3分足らずだったが、抱えて持ち帰ったのか、あるいは、おばあちゃんの手押し車に乗せたのか─

NEC PC9801の思い出

「そんなに好きなら売ってあげるよ」

唐突につぶやいたSに、僕は自分の耳を疑った。

Sとは、小学生のときからの付き合いで、いろんなゲーム機を持っていたことから、僕は毎日のようにSの家に遊びに行っていた。

中学にあがってから、Sは、当時とても高価だったパソコンを親に買ってもらっていた。定価で40万円ほどだったと記憶している。

一般家庭の中学生が、40万円のパソコンを親に買ってもらうのは不可能だし、店で買うにしても現金を貯めて一括払いしないと難しい。

だから、僕は、Sの申し出に驚いたと同時に、それなら今すぐ手に入る(買える)と思った。

「ホントに?いくらで?」

「いくらでもいいよ」

投げやりにSは言ったが、本当に売ってくれるのだろうか。ともかく、パソコン本体と付属品、ゲームソフトは、ぜんぶ合わせて50万ほどだと、僕は知っていた。

「まとめて払えないから、分割でもいい?最初に6万、のこりの30万は5万円の6回払いで」

「いいよ」

こうして、16歳の僕は、NECのPC9801を手に入れた。

そんな高価な品を、高校1年生の子供が持ち帰ったのに、父は興味のないフリをしていた。代金は自分で払うと言ったから、静観を決めこんでいたのだろう。まったくアイツ(父)らしい。

最初に6万円を払い、残りの30万は、高校からはじめたアルバイト代で払う予定だった。アルバイトは、月に5万数千円。のこりの30万は半年(5万×6ヶ月)働けば払える計算だった。

お金の方は、その時ちょうど人手不足で、月6万円以上になったから、毎月6万円づつを5回払って、きちんと30万円を納めた。

ゲームソフトは、10本ほどあって、覚えているのは、KOEIの信長の野望、SimCity、大航海時代II、アンジェラスなど。

その中でも「信長の野望 戦国群雄伝」は、最もやりこんだタイトルだった。もちろん、シムシティ、大航海時代II、その他、どれも素晴らしいゲームだった。

その後、自分で買ったのは、プリンセスメーカー、ダービースタリオン、ウイニングポスト、RPGツクールなど。

どのタイトルも、のちに、家庭用ゲーム機に移植されて、試しにプレイしたけれど、パソコン版のクオリティには遠く及ばなかった。

インターネットが一般的になったのは、僕が23歳くらいの時期で、そのころは、仕事がやたらと忙しくて、パソコンに興味を持つヒマすらなかった。

ちょっとした、機会とタイミングさえ合えば、パソコンを使う仕事が出来たのかも知れないけど、運も知恵もなかった僕には、残念ながら縁がなかった。


今は、スターデューバレーっていうゲームを、スマホで遊んでる。無職でずっと家にいるから、何時間でもプレイできる。

スタバレで、のんびり🦥まったり、牧場ライフ?

ウソだ。

こいつは、とにかく、効率と時間のせめぎ合い。まったくもってスローライフなどできない。