ちるろぐ

ここが僕のアナザースカイ

仕事で成長するチャンスは2つしかない

人が成長するって、いったいなんだろう?

子供なら、背が伸びたり、言葉を覚えたりするから分かりやすいよね。でも、大人はどこで判断すればいいのかよく分からないんだ。

そこで僕が、成長した、レベル上がったって感じたときのことを話すよ。

成長を感じるときのパターンは大きく2つあった。

①出来ると思ったことが出来なかった(失敗した)とき。
②出来ないと思ったことが出来た(成功した)とき。

ひとつ目は、いわゆる挫折ってやつだね。試験に落ちたり、仕事でミスしたり。これは比較的わかりやすい成長じゃないかな。

だから今日は2つ目について考えてみたい。「出来ないと思ったことが出来た(成功した)とき」について、お話しするね。


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背景

僕は地方の、とある会社に勤めていた。業種は卸業。従員40名、年商は20億くらいだったかな。業務は日々受注した商品をそろえて配送していた。物流と大規模小売がお得意先だったよ。

僕の仕事は、「営業」と呼ばれる商品担当(以下営業)が作成した仕分け表をもとに、商品を所定の場所に運ぶこと。作業自体は単純なんだけど、商品の取り違えや置きまちがいをすると、金銭的なペナルティもあったりして、けっこうシビアだった。

仕事をひと通り覚えると、僕はある営業の仕分けをすることになった。そこから地獄が始まったんだ。詳細は省くけど、仕分けがぜんぜん間に合わない。どんなに急いでも時間が足りないんだよ。

だから毎日、残った仕分けをみんなに手伝ってもらってた。毎日、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだったよ。

「やっぱり僕はバカなのかな」って、自虐的になってとき、その原因はあっさり判明したんだ。それは僕のせいじゃなくて、営業の仕事が遅すぎたんだ。僕が仕分け表を受け取るときには、すでに時間が足りてなかったんだよ。ほかのみんなは、僕より1時間もまえに仕分け表をもらっていたんだ。

それが判明してから、僕は、仕分け表を早く出してほしいって要求した。でも一向に改善する気配はなかった。その営業も一生懸命やっている様子だったから、僕もそれ以上は強くは言えなかった。

なんでそんな営業が、営業なのかって疑問は、彼が社長の息子っていうファクターが大きく影響していたと思う。ほかの営業が1時間でやることに、2時間かかってたから、その遅れがぜんぶ僕に舞い降りてきた。とんだエンジェルがいたもんだよ。

みんなは事情を知ってたみたい。つまり中途採用で高卒の僕は、都合よくスケープゴートにされてたってわけ(基本的には大卒採用だった)。悔しかったよ。ぜんぶ僕のせいみたいな気分になるんだ…。

だから僕は、この現状を破壊してやろうと思った。どんなに時間がなくても、みんなの手を借りずに、ひとりで片付けてみせるって誓ったんだ。

成長の過程

・待機中
みんなが仕分けしてるのに、僕だけひとりぼっち。早くしてよって思いながらイライラしてた。それから1時間くらいしてやっとできるから、いつも「もう間に合わないよ…」ってなってた。

だから僕は、自分の中にある「1時間では絶対にムリ」っていう常識を捨ててみた。「早くして、なぜ遅いの、ミスしたらどうしよう」とか、不安、焦り、怒り、みたいな負の感情はすべて捨てたんだ。雑念を振りはらって頭をカラッポにした。たぶん「瞑想」に近い概念だよ。


・仕分表
まず仕分け表を見て、現物と照合。商品が揃っていることを確認したら作業を開始するんだ。そのとき思いついたのが「効率」を考えないこと。どうせ考えても間に合わないんだから、いっそのこと考えるのをやめたんだ。

「考えるんじゃない。感じるんだ」っていうと、胡散臭く聞こえるけど、たとえば、プロスポーツ選手なんかは、考えてから動いてないよね。時速200キロのテニスボールを打ち返すとき、体は反射的に動いているハズなんだ。

僕は人間の潜在能力は、人智の及ばないところに眠っていると考えたんだよ。だから、時間を圧縮するために、視覚と思考と動作を、並行して処理してみた。通常はミスがないように確認しながら行なう作業なんだけどね。頭にまとめて放り込んでみた。

なにもかも、いっぺんにやろうとすると、パニックになりそうだよね。ところが人間は極限まで集中すると、文字と数字を追い、考えながら、手足を動かせるようになるんだ。右手で字を書き、左手で電卓をうち、目で商品をチェックするというように。それがゾーンなんだ。


・運搬
仕分けが完了したら、軽量物は歩いて、重量物はフォークリフトで運ぶんだ。ここでも直前まで考えちゃダメ。最適な動線は、エンジンを始動したら自然とおりてくる。俯瞰した道筋が、瞬間的にイメージできるんだ。実際は脳が高速でルートを弾き出しているのかも知れないけど、僕の感覚では、ひらめいたように感じられたよ。

成長のあと

それから僕は、尋常じゃない速さで仕分けられるようになった。もちろんミスもなく時間内だよ。周りの人に「どうやってるの?」って聞かれたけど、説明は出来なかった。見る・考える・行動するっていう順番を無視しているから、理屈じゃ説明できないし、自分にも分からなかったんだよ。

ともかく、僕の驚異的なパフォーマンスによって仕事はなんの支障もなくスムーズに運ぶようになった。僕は自らを「10年にひとりの天才」と呼んだよ。誰も褒めてくれなかったからね。逆に上手く行ってるのを面白くないと思う人もいたみたい…。

営業の仕事は、相変わらず遅かった。それが彼の限界だったみたい。でも、いつも丁寧に振り分けてたから、お客さんの評判は良かった。そこは評価するようにしたよ。

成長はイノベーション

こんな風に、構造を根幹から覆すイノベーションは既成概念を破壊するところから生まれるんだ。それが人の成長なんだよ。不可能をぶっ潰すんだ。

その昔、松下幸之助は「知りすぎた弱さはないか」って言ってた。知りすぎる、つまり、知見を得たことによって、逆に壁を作っていないか、出来ない理由を自分で作っていないかってこと。

渡邉美樹の「途中でやめるから無理になる、やめなければ無理じゃなくなる」は、暴論だけど正しい。間違いはそれを他人に強要してしまったこと。名言は他人に押しつけた瞬間、迷言に変わってしまった…。あくまで個人として「私は家族(従業員)を守るためにそれをやってきた」と語っていれば、生きながら僕のようなレジェンドになれたんだけどね…。

最後に

理不尽な要求、無茶なスケジュール、不可能なタイムアタック…。

もしも、みんなが、そんな局面に遭遇したら、それはピンチじゃなくてチャンスなんだ。スリル満点だけど恐れる必要はないよ。ダメもとで果敢にチャレンジしてみて。そこできっと自分の中に新しい自分を発見する。不可能を破壊した先には、いつだって貴重で不思議な体験が待っているんだ。