散るろぐ

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婚活のプリンセス

僕の住んでる田舎では、アラサーともなると、結婚してるかどうか、わりとカジュアルに聞かれる。

悪気はないとわかってるから、気にはしないけど、問題は、まだ結婚してないんです、って答えた後なんだよ。

「今、なん才になるの?」から始まって、そろそろ結婚した方がいいって話題になる。

いちおう婚活中です、とは言うものの、僕はたぶんもう結婚はしないから、話を合わせるだけ。

でも、関根さんは、けっこう真面目に婚活している。関根さんってのは、僕より3つ上の44歳。港湾関係の仕事をしていて、お給料なんか僕とは雲泥の差がある。

でも、お互いシンパシーを感じるところがあって、たまに話したりする。

昨日も、ジムの更衣室で会ったから、この前、婚活パーティーで知り合った女性と、その後どうなったか聞いてみた。

僕たちは、ほどよくコミュ障をこじらせているから、そこは察して聞いてほしい。


僕「あれから、うまくいってます?」

関根「いやー。フヒヒ」

僕「ハハハ」

関根「だんだん、お姫様になってくるんですよ。フヒヒ」

僕「お姫様?」

関根「そうそう。お姫様。フヒヒ」

僕「プ、プリンセス、すか」

関根「フフッ、こっちがね、話して楽しませないといけない。フヒヒ」

僕「あ、ああ…」

関根「食事代も払わないといけない」

僕「あ、ああ…」

関根「ご馳走して、気も使う…フヒヒ」

僕「なんだか、接待みたいな…」

関根「フ!フヒッ」


ちょっと意味不明な、いや、かなり意味不明な会話だけど、伝わるかな。つまり、まだ同じ女性と続いてはいるけれど、どんどんプリンセス化が進んでいるらしい。

僕は先に着替えたから、お先にって声かけて帰ったけど、帰りの車を運転しながら、まだ関根さんのことを考えていた。

関根さんが、お金と気づかいをして、得るものってなんだろう。それが結婚だったとしても、そんなのに未来あるのかな。

結婚したら、おそらく、お給料を渡して、機嫌を取りながら暮らすんだよ。食事を用意してもらっても、きっと落ち着いて食べれないよ。

そもそも食事って、メニューを考えるのだけでも大変。だから、もしも食事を作ったとしても、それは気分の良いときだけ、というような、極めて限定的な場面しか思い浮かばない。プリンセスはそんな面倒なことしない…。

結婚って、お互いが対等でなければ、それはもう、使用人と暴君の関係でしかない。いや、使用人は、お給料もらえるから、そっちの方がマシか…。

結局、関根さんにとっては、自分の稼いだお金、で美味しいものを食べて、女の子のいる店でお酒を飲んで、アイドルに恋していた方が、幸せなんじゃないかな。

昔の「お見合い」なら、まず結婚ありきで、それから関係性を築いていけた。それは、男性が女性を養う(お金)という前提があったから。それが無くなってしまえば、婚活市場には、お姫様しかいなくなる。

夜の国道はとても静かで、パチンコ屋さんだけが明るく光っている。駅前の交差点を過ぎると、バス停には、仕事帰りの女性がたむろしていた。

もう22時すぎなのに、こんな遅くまで働いているなんて、一体なんの仕事だろう。あれが働くお姫様たちなんだろうか。

僕もフヒヒと笑うしかない。