散るろぐ

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ファンの女の子が太っていた話

みなさん、学生時代に自分のファンっていましたか?

僕には、高校生のときファンの女の子がいたんですよ。

あらかじめ断っておきますが、それは僕がモテたというような自慢話しではないということです。

むしろ、実らなかった恋と、これから新しい恋が芽生える若い人たちに届けたいストーリーです。

お時間があれば、お付き合いください。

お肉屋さんでアルバイト

僕は学生時代に、お肉屋さんでアルバイトをしていました。

ある日、仕事をしているとバイト仲間の友人が、僕のことをヒジで小突いて耳打ちするのです。

「お前のファンが来たぞ」と、そう言うのです。

僕は最初、意味が分からずに、「なに?」と聞き返しました。すると友人は、含み笑いをしながら、親指でカウンターの向こうを指すのです。

僕がそちらに視線を向けると、女の子のお客さんが、背を向けて立っていました。僕は、即座に「まさか」と、否定したのですが、友人は絶対に間違いないと、そう言うのです。

理由を聞いてみると、友人は自信たっぷりにその根拠を示してみせました。

ひとつは、僕がいるときしか買物に来ないこと。

ふたつめは、買う商品が不自然なことです。

友人が言うには、彼女はいつも、豚肩ロースを100グラムしか注文しないとのことでした。料理のメニューは日々変わりますから、言われてみれば不自然です。

そしてみっつめが、どんなに混雑していても、必ず僕にしか注文しないという事でした。


今なら僕も、すぐにピンと来たかもしれません。しかし、当時は、指摘されるまでまったく気が付きませんでした。

なぜなら、僕は、仕事にめちゃくちゃ集中していたからです。

本気のアルバイト

お客さんの注文を受けてから、トレーを取る、トングで肉をのせる、計りにのせてグラムと単価のシールを出す、トレーをラップする、レジを打つ、お金をもらって、お釣りと商品を渡す。

僕は、その一連の動作を、どれだけ速くできるかに血道をあげていました。それこそ、トングの角度、足の運びからレジへの歩数まで、徹底的に研究し、いかに最短でお肉をラップしてお客さんに渡せるかに、コンマ何秒のレベルで執着していたのです。

グラムとレジの金額は、見なければなりませんが、それ以外の動作は、文字通り、目をつぶっても出来るほど熟達していました。

まるで機械のようなその動きに、バイトの仲間たちは腹を抱えて笑いましたが、僕は本気でした。どこまで効率とスピードを高められるか。それは、僕の中で、ある種の宗教の域にまで達していたのです。

ですから、僕は、お客さんの顔をまったく覚えていませんでした。

いっぽうで友人は、それぞれのお客さんの注文や好みを記憶しており、先回りして動くタイプでした。僕は、彼の仕事ぶりに、そうゆうやり方もあるのかと、衝撃を受けたのを記憶しています。

つまり、僕たちは、やり方は違えど、お互いに良きライバルとして、切磋琢磨していたのです。


ファンの話に戻りましょう。

僕のファンだと言う、その女子高生は、お世辞にも可愛いとは言えませんでした。

また、身体が大きく、身長は160cm、体重は推定で80キロを軽くオーバーしていたように思います。

彼女は、自転車に乗っていたのですが、その自転車はとても小さく見えました。サドルは大きなオシリに埋没し、フレームはどこまで耐えられるのか心配になるほどです。

バイト仲間は、彼女のことをドンキー(コング)だとか、曙(横綱)と呼んで、笑っていましたが、僕は彼女に、それほど悪い印象を持っていませんでした。

色が白く、芸能人に例えると柳原可奈子のようにキュートな感じだったからです。ですので、もしも告白されたら、付き合っていたかも知れません。

彼女は、僕がバイトしていた1年間、ほぼ毎回現れて、豚肩ロース100グラムを注文して帰っていきました。しかし、それだけで、結局、僕らはそれ以上の関係になることはなかったのです。

最後に

この話を通じて、僕が伝えたいのは、容姿なんか気にしなくていいよ、という事です。人の好みは十人十色です。誰が、どんなひとがタイプかなんて、実際に話してみなければ、誰にも分かりません。

ですから、もしもあなたに気になる異性がいたとして、自分の容姿に自信がなくて、思いを伝えられなかったとしたら、そんなことには気にせず、思いきって声をかけてみてください。

万が一の可能性もありますし、たとえ、その結果が良くなかったとしても、次へのステップには、きっと繋がるはずです。

翻って、僕はと言えば、いつも自分に自信がなくて、片想いばかりの月日でした。ですから、この話は、自分自身へのエールでもあるんです。

がんばれ、僕。

それでは、みなさんの幸運を祈ります。