ちるろぐ

ここが僕のアナザースカイ

チャットルームの思い出

古い話です。僕がまだ20代のころインターネットには「チャット」というサービスがありました。イメージとしては、誰でもログインできるLINEのようなサービスです。

チャットルーム

当時の「チャット」は大手のポータルサイトが運営していたこともあり、大変活気がありました。仕事を辞めてひきこもりだった僕は、暇さえあればそこにログインしていました。

僕がおもに活動していたのはアンダー18の女子がメインのルー厶です。僕はとっくに二十歳を越えていましたが、なぜかそのルームだけは、いつも同じメンバーが現れて、いつでも話すことができたからです。

冷静に考えるとおかしな話です。昼間から毎日チャットできる18歳以下の女子がそんなに大勢いるはずがありません。しかし、僕はみんなのプロフィールを信じていました。


http://www.flickr.com/photos/46221849@N06/4333344530
photo by turkletom

ひきこもり

大人ひきこもりの僕でも、チャットルームにいけばみんな興味を持ってくれる。どんどん話しかけてくれる。おまけに女子高生までちやほやしてくれる。僕はチャットの虚構世界にどんどんのめり込んでいきました。

そんなときに知り合ったのがアカネさんでした。気さくでパソコンに詳しい彼女に、僕はなんでも話すようになります。そのうちメッセンジャー(ツイッターのDMのようなもの)で毎日やりとりするようになりました。

性に目覚める

アカネさんは自称18歳の女子高生でした。僕は自分が年齢を偽っていることも忘れて、アカネさんに夢中になります。

最初のころはパソコンの話ばかりだったのですが、そのうち、ちょっとアダルトな会話をするようになり、彼女が送ってくれる画像を見てハァハァしてしまったこともありました。

それはメッセージと画像だけの儚い繋がりでしたが、新鮮ですごく楽しい日々でした。

ノートパソコンのスピーカーから

ある日、ネットの設定で分からないことがあり、いつものようにアカネさんに教えてもらっていたところ、手順が複雑だったのでよく考えず言われるままに設定を進めていました。するとアカネさんが急に「聞こえてる?」と尋ねたのです。

僕はなんのことか分からず耳をすましてみました。何も聞こえないし、意味もよく分からなかったので「聞こえないよ」と返事しました。

すると、とつぜん背後から男性の声が響きました。パソコンに繋いだスピーカーから大音量で流れたのは紛れもない大人の男性の声でした。

どういう仕組みか分かりませんが、アカネさんは僕のパソコンへ音声を送ってきたのです。今でこそ当たり前ですが、そのときはまさかパソコンのスピーカーに人の声を送れるとは想像もしなかったのでパニックになってしまいました。

その後

その出来事のあと、僕はチャットへ通うのを止めてしまいました。インターネットの何もかも信じられなくなったのです。アカネさんも確信はありませんが男性だったと思います。

それから半年ほど、自分が迂闊にも漏らしてしまった個人情報について思い悩みました。幸い僕の実生活にはなんの影響もありませんでしたが、心のダメージから立ち直るのに1年はかかりました。

みなさんもいつの日か、広大なネットの海を漂う、純白のブリーフからポロリした少年の画像に出会うかもしれません。それは青春という名の僕の残像です。

見かけたら供養してあげてください。