小さな会社で、なんとなく働いていたら、僕もそれなりの年齢になってしまった。
入社したころ、創業者だった社長は、絵に描いたようなワンマン経営で、ヤクザみたいな人だった。とうぜん、仕事に手順というか、マニュアルなんてモノは存在しなくて、僕しか知らないことも沢山ある。
社長がポックリ亡くなって7年。それから社長が2人変わった。今の社長は52歳だから、まだまだ元気だけど、人生なにがあるか分からないからね。
つまり、僕にもそろそろ、社長の地位が視野に入ってきたということなんだ。どう転ぶかわからないけど、次に社長になる確率がもっとも高いのは、僕なんだよ。ククク。
そこで今日は、僕が社長になったらやりたいことを、書いていこうと思う。
リストラの断行
むかしは、忙しくてテンテコ舞いしてたけど、そのときに比べたら、ずいぶんヒマになってしまった。そこで、余剰人員を大幅に削減する。とくに過去、僕に高圧的な態度をとったり、生意気な口をきいた従業員を、全員クビする。
時代は流れるもので、世の中には因果応報という理(ことわり)があるってことを、思い知らせてやるんだ。
社員の若返り
大幅なリストラを断行したら、新しい人を雇わないと。20〜30代の若い女の子がいいよね。チャラチャラしたのは好みじゃないから、落ち着いて清楚な娘にしよう。毎日、ワクワクできる環境を作るのも、社長の大きな役目だからね。
業者の見直し
いつもくだらない商品を持ってきて、ちょろちょろしている営業を出入り禁止にしよう。軽い気持ちで新商品を増やされて、こっちは大迷惑してるんだ。他所の製品を売るなら、スーパーの棚に並べて、黙っていても売れるもんじゃなきゃ意味ない。ウチみたいな専門店にゴミを持ってくるな。お前は一生、道の駅をグルグル回っていればいい。
生活の向上
社長ともなれば、付き合いも増えるだろうから、高級な外車を手配しなきゃならない。お嫁さんも、もらっておこうかな。経験則から、女の子には、社長という地位が圧倒的にモテるってことを、僕は知っている。巷にはモテに関してトンチンカンなアドバイスがあふれているけど、もっとも強度の高いアピールポイントは、コミュ力でも爽やかさでもなく、地位と安定した高収入なんだよ。
つまり、モテたいなら社長になれってことなんだ。僕も社長にさえなれれば、結婚の難易度は限りなくゼロになる。
うん。なかなか良い、現実的なイメージがトレーニングできてきた。後は、いつ社長になるチャンスが巡ってくるのか、ってことと、それまで会社が保つのか、ってことだけだよ。
残念ながら、今の社長は、借金で借金を返すというような経営をやっているから、いつまで続くか…。
しかし、42歳ともなると自分自身にも、人生にも、ある程度の見切りがついてくるよね。たいした器じゃない男だけど、ワンチャンあると信じて、あきらめずに生きていきたい。