ちるろぐ

ここが僕のアナザースカイ

たべり婆さん

きのう、仕事の帰り道に、知らない婆さんと出会った。

僕の借りてる駐車場って、家からちょっと遠いから、5分くらい歩かないといけなくて、その途中で、遭遇してしまったんだよ。


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最初は、歩きスマホしてたから、接近してくるのに気がつかなかったんだけど、それが失敗だったね。

顔はよくわからなかったんだけど、へし曲がった腰が老婆であることを物語っていた。

僕はスマホからチラっと目を上げて、左に避けたけど、やっぱり婆さんもそっちへ進路変更してきた。

今度は右に避けたんだけど、案の定、その婆さんもそっちへ向きを変えた。

嫌な予感がしつつ、歩く速度をゆるめて、目を向けると、むこうもこっちを見てる。下から睨むようにロックオンしてるんだよ。

ヤバい。フェイントを入れてかわすしかないぞって、僕も臨戦態勢にはいった。その瞬間、婆さんがビニール袋から、ナニかを取り出して、僕に突きつけてきたんだよ。

「食べり!」

うわ、最悪だ…。やっぱりだよ。

「食べり」ってのは、こっちの方言で、食べていいよ、みたいなニュアンス。

つまり、その婆さんは、どこかで大量の菓子パン(おそらく山崎製パン)を、ビニール袋パンパンにもらってきたんだよね。

で、自分だけじゃ食べ切れないから、見ず知らずの僕にその菓子パンを押しつけようと思って近づいて来たってワケ。

よその地域はどうか知らないけど、こっちじゃたまにあるんだよ。本当に。

ここでの選択肢は3つしかない。

  • 丁重に断る
  • もらう
  • 逃げる

僕は、ソッコーで逃げた。ひどいって思うかも知れないけど、かかわると、ろくでもないんだよ。

まず、断ろうとして立ち止まったら最後。相当の時間、粘られる。

「食べり」
「いえ、いいです」
「食べり!」
「いやいや、ホントに…」
「食べり!!」
「いえ、パンは食べないんで」
「食べりーッ!!」

そして、けっきょく、押しつけられるか、逃走する羽目になるんだよ。

もらうのは絶対に嫌だった。どうせ食べれなくて捨てるの分かってるから。菓子パンは身体にわるい(僕にとっては)から間違いなく捨てる。なんでそんな罪悪感を押しつけられなきゃならないんだよ!ふざけるな。

だいたい、ひとりじゃ食べ切れないパンを、もらうんじゃない。このバカ。

そうゆうワケで、僕は一目散に逃げ出した。それが正解。小走りにタッタッタッと駆け抜けた。そんなに飛ばしてないけど、婆さんを振り切るのは余裕だった。貴様の思い通りにはならんぞ。ザマーミロ。

すると婆さん、フルボリュームで叫んだ。

「食べりー!!!!」


本当にもう、なんでこんな目に会うんだよ。

やれやれ。