坂口安吾の「白痴」を読んでみた

知人に勧められ、 坂口安吾の「白痴」を読んでみました。


予備知識なしで読みはじめた「白痴」ですが、僕が抱いていた日本の戦中、戦後の印象がガラリと変わりました。

今まで見聞きしてきた当時のイメージと言えば、戦争の悲惨さと、焼け野原からの再生です。

しかし、あの時代の人々が、一様に、同じ考えをしていたはずがありません。つまり、誰もが日本の勝利、もしくは戦争の終結を望んでいたワケではないということです。

現代の日本にあっても、現状に耐え難い不満を抱えていたとしたら、日本が滅び、何もかも焼き尽くされてしまえ、と願う人がいても不思議ではないでしょう。

また、これが最期だと思って生きるのと、何の目的もなく無為に老いていくのでは、生きることへの手応えが、圧倒的に違うのだろうということも感じました。


本書には、7つの短編が収められており、表題の「白痴」では、戦争を観念的に捉えている新聞記者と、戦争が無垢な恐怖でしかない白痴の少女が、空襲から共に逃れる様子が、鬼気迫る描写で描かれています。

そこには、作者の葛藤も、望むべき結末も書かれていません。あるのは、ただ破壊と、むき出しの人間だけです。それが逆に、もしも自分がその場にいたら、なにを考えどう生きただろうか、という余白を生みました。

いっぽうで、非常にモヤモヤする読後感もあり、何かしらの答えを求めて、再びページを繰ったのですが、どこにも見当たりませんでした…。ちくしょうという思いでいっぱいです。

個人的には、「戦争と一人の女」が好みでした。女性視点で書かれています。

太宰治の女学生もですが、当時は女性視点で書くのが流行っていたのでしょうか。それとも、女性の作家が少なかったのか…。

ナゾは尽きませんが、今日はここまでです。


白痴

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