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散るろぐ

千載具眼の徒を待つ

恋が終わった

暮らし


今日は良いお知らせがあるよ。僕のブログの女性ファンにとっては、朗報と言えるかも知れないね。

ちかごろ調子が悪かったんだけど、それは恋をしてたからなんだよ。実は好きな女の子がいたんだ。彼女の名前は牧村さん。僕の家の近くのコンビニで働いている。いや、もう辞めてるかも…。

出逢ったのは偶然というか、仕事が早く終わったから、帰りにコンビニに寄ったんだよ。たまにコンビニでお菓子を買うのが、僕の唯一の楽しみなんで。がんばる自分へのご褒美的な。

キャラメルポップコーン食べたことある?

あれ美味しいんだよ。

僕はコンビニであんまりウロウロしない派なんだよ。アレもコレも欲しくなってしまうから、いるものを買ったらレジに直行してる。

そしたら、新しい人がいたんだよ。オーナーのおばさんじゃなくて、若い子だった。

たぶん高校生くらいかな。

そのとき、ナナコカード忘れてたから、現金で払ったんだけど、お釣りを渡すとき、その子が僕に触れてくれたんだよ。

両手で手のひらを包みこむようにファっと。わかるかな。触れるかなって絶妙な距離感でフワ〜とね。

それで僕は恋に落ちた。単純だよね…。

わかってる。それマニュアルって言いたいんでしょう。接客マニュアルだから特別な意味ないって、そう言いたいんだよね?

でも、僕にとってはスペシャルだったんだよ。だいたい僕はいつも雑に扱われる。オドオドしてるから、ナメられるんだよ…。

でも、牧村さんは違った。名前は名札ついてたからスグわかったよ。澄んだ瞳と、シワひとつないスベスベの手。そして流れる黒髪。彼女こそ天使だって、そう思ったんだよ。


ひとつだけ問題なのは、年の差だった。でも、片思いなら、年の差なんて関係ないよね。 40歳が17歳の女子高生を好きになるのは犯罪ではない。

断言するよ。しかもこっちは独身なんだ。ひと山いくらのバツイチみたいにお安くないんだよ。


牧村さんの良い所は、その澄んだ瞳と、柔らかな言葉使いかな。キュンキュンしてしまう。それから小さな耳にかけた流れる黒髪。ツヤがまったく違う。これから花咲く生命力に満ちあふれている。

いつもバス停にたむろしてる、くたびれたアラサー女子とは本質的に別の生き物だよ。

ところで、彼女らは、なんでいつもスマホをいじくってるんだろう。彼女らにも、牧村さんみたいに初々しい時代があったんだろうけど、それはもう過ぎ去りし日の抜け殻なんだよ。セミの抜け殻だね。


それから僕は、毎日セブンに通った。あ、セブンって言っちゃった。まぁいいや。セブンは全国に10万店舗あるから、問題ないと思う。

牧村さんは夕方しか居ないから、けっこう急いで行かないと間に合わないんよね。

でも、ひとつだけ心配があった。

牧村さん、むっちゃかわいいから、僕と同じように通ってる連中がいるんだよ。だいたい同じ時間だから、またコイツいるやん、ってなる。なりたくもないのに顔見知りになるんだよ。

中には、ガラの悪そうなのもいて、特に嫌いだったのが金髪だった。綾小路なんちゃらに似てるやつで、僕はそいつに氣志團って名付けてたんだよ。

氣志團はいっつも雑誌コーナーで漫画読んでるんだけど、お前そこで何時間立ち読みしてんだよ、店の迷惑考えろよって、思ってた。


そうして僕は、牧村さんとのいろんな可能性について検討しながら、チャンスをうかがっていたんだよ。まずは連絡先を聞こうかとか、それともあと1年待ってみようかとか。

僕の歳になれば、1年なんてあっという間だからね。それぐらいは余裕で待てる。高校さえ無事に卒業できたら、問題なくアプローチできるから。

ところが、3日まえに事件が起きてしまった。牧村さんが居ないんだよ。どこにも姿が見当たらないんだ。誰かに、もしかしたら、氣志團に絡まれて辞めちゃったのかも知れないって思った。

サイアクだって思って、とりあえず店員に聞いたよ。けっこう勇気がいったけど、そこらへんで弁当詰めてた店員さんに声かけてみたんだよ。

そしたら、それが牧村さんだった。

あの美しかった黒髪は、見るも無残な金髪に変わっていた…。

一瞬のうちにいろんな可能性が、走馬灯のように脳内をかけめぐったけど、もうコンビニを飛び出してた。

どうやって帰ったのか覚えてないけど、気がついたら家にいたよ。まさかこんなことになるなんて。ひどすぎる。サイアクだ。


あれから3日経って今、ようやく冷静になれてる。もうあの店に行くこともないだろうね。泣くほどではないけど、大切な物を失って呆然としているってのが、正直なところ。

やっぱ僕にはブログしかないよ。もうすべてを忘れて、文章に向き合うよ。それしかない。




恋が終わった…という話題でした。