こんちは。ライターのチルドです。
作家の石田衣良さんは、雨の日に自転車で走るのが好きだ、とどこかに書かれていました。ちょっと意味がよく分かりませんが、多かれ少なかれ、作家とはそういう人種なのでしょう。
ボス貝を求めて
僕が子供の頃、雨の日の楽しみと言えば「貝拾い」でした。学校や公園のグラウンドは、海から運んできた砂で作られていたので、小さな貝殻が無数に混じっていたのです。
大雨の日、側溝から水があふれるような大雨の日が来ると、僕は必ず傘をさして校庭を歩きました。強い水流で砂が流され、今ままで見つからなかった「ボス貝」を見つけやすくなるからです。
ボス貝ってなに? という話しですよね。これはたぶん、ウィキペディアで調べても分からないでしょう。
貝割り
かなりマイナーですが、僕の住んでいた地域には「貝割り」という遊びがありました。
これは、まず、2枚の貝殻を用意します。そして1枚を地面に置き、もう1枚をそのうえに重ねます。それぞれの湾曲した背の部分をくっつけるかたちですね。
それを上から石で叩きます。だんだんと叩く強さを増していき、先に割れてしまった方の負け、というローカル色あふれる子供の遊びでした。
たいていは薄っぺらい貝ですが、ごく稀にとんでもなくぶ厚い貝があります。ヘタをすると厚みが1センチを超える突然変異もありました。
雨の日はそんなキングオブキング、王の中の王と呼ぶにふさわしい「ボス貝」を見つける絶好のチャンスだったのです。
勝負は一度きり
僕は、このために、拾った貝を何十個もポケットのなかに忍ばせていました。そして休み時間のたびに遊心の貝と戦わせていたのです。
この遊びの醍醐味は、決着がシビアなところです。なにしろ、どんなに分厚くてお気に入りの貝でも、負けてしまえば割れてしまいます。二度とふっかつ出来ないんですよ。
どうです、ゾクっときませんか?
大雨の日、傘をさして下を向いて歩く子供は、大人から見るとさぞかし不気味だったでしょう。
こっちは、終始ワクワクしながら歩き回っていたのですが、周囲にはいらぬ心配をかけてしまったのではないかと、今頃になって思っています。
近ごろは、なんでもリセットしてコンティニューできる便利な時代ですよね。
あのとき持っていたナンバーワンのボス貝は、一度も戦わせることなく、今も僕の机の引き出しにしまってあります