ちるろぐ

ここが僕のアナザースカイ

女子中学生と一緒にお風呂に入って話したこと

タイトルがいかがわしいけど、だれが読んでも平気な内容だから安心して。

きのう、中学3年生の女の子と一緒にお風呂に入った。僕はたいていひとりで入浴するんだけど、たまたま一緒になったんだよ。

その子は、ちょっと天然というか、いい意味で天真爛漫な子で、エントランスで出会ったりすると、駆けよってきて、お菓子の箱から、きのこの山をひと粒くれたりする、そんな女の子だった。

僕はチョコが好きだから、大歓迎なのだけど、甘いものが苦手なひとは、ちょっと困ってしまうかもね。

それはさておき、僕は結婚してないから子供もないし、あまり女性と話す機会もなくて。だから、女の子が湯船に近づいてきたとき、先にそーっとお風呂からあがるつもりだった。

ところが、向こうから話しかけてきて。

「疲れたー!でも、明日も学校なんだよ!日曜も実習があるって、信じられる!?」

僕は、お、おう、となったけど、冷静に「そうなんだ」って返した。

「そうだよー。もう身体が痛くって…」

「そうなの」

今度は、さっきよりちょっと悲しそうに言ってみた。それが女の子の琴線に触れたらしく、学校のことをいろいろ話してくれた。

「男の子とかね、まえにこうして、後ろからこうなってくるからね。それで立って立ってー、って、立てるワケないじゃん!信じられる!?」

女の子は、身振りで、抱っことおんぶの仕草をしながら、僕へ訴えてくる。胸はぺたんこで、足も小枝のように細い。たしかに、その身体じゃ、幼稚園児を扱うのは大変そう。

なんでも、学校の活動で、休日は幼稚園のお手伝いをするらしい。でも、将来、保育士になりたいというワケでもなくて、女の子の通ってる学校が中高一貫の私立だから、高校生とおなじような実習をするそう。

僕はニコニコしながら聞いていたけど、その調子で、ずーっと喋ってるから、お風呂からあがるタイミングを逃してしまった。

そろそろあがらないと死にそう。お風呂はキライじゃないけど、熱いお風呂には1分くらいしか浸かっていられない。それなのにもう10分は経ってしまっている。

それから女の子は、学校の勉強の話もはじめてしまった。

「2次関数とか意味あると思う?面積が分数になるんだよ!信じられない!」

ごめん、おじさんニジカンスウわからない。分数の掛け算もできないんだよ。小学校の九九で止まってるから、中学3生の数学なんて、とても理解できない。

でも、黙ってニコニコしながら相づちを打ってた。ウソついたんじゃなくて、僕らまだ、ホントのこと言えるほど、親しくないから…。

でも、子供って、ふんふんって聞いてあげると、すごくよく話すね。びっくりした。大人が主導権もって話し始めると、離れてしまうのかも。

それにしても、もう限界。僕はそろっとお風呂のへりに腰掛けて、足だけ浸かってたけど、足が真っ赤になってしまった。

どうしようと、ホントに困っていたら、ちょうどウォーキングの終わったおばちゃんたちがワラワラやって来て、入れ替わりでやっとお風呂から出れた。

じゃあ、またね、って言ってバイバイして、急いでシャワーを浴びにいった。冷水にして頭からザーザー流して、足にもかけまくった。一息ついてようやく、更衣室の長椅子に腰かけたけど、やっぱり足が赤くなって、ところどころ腫れてしまった。

これを、痒くて掻いてしまうと、もっと大変なことになってしまうから、扇風機を強にして、じっと耐えた。

それにしても、中学生の勉強について、なにも答えられなかった。自分が、無駄に歳をとってしまったみたいで、やるせなかった。

僕がもっと賢ければ、女の子の「信じられない」に、的確に答えて、ついでに、学ぶことの素晴らしさについても、教えてあげられたかも知れないのに…。

そんな思いが、頭の中でぐるぐる回って、情けないやら悲しいやら、足は痒くてたまらないし、ひどい気分だった。

僕はパンツ一枚で長椅子に座って、うなだれていた。だらしなくたるんだお腹が、畳んだフトンみたいになって、折り目から水滴がにじみ出ていた。


帰りの道すがら、スマホを取り出して「中学生 数学」で検索してみると、見たことのない漢字がずらっと並んでいた。その中のひとつをタップしてみると、意味不明な数式があらわれて、あわててタブを閉じた。

人生には、どうしようもならない事がたくさんある。