部屋を片付けるための心得


今日こそは、部屋を片付けようと、固く決意して帰ってきた。ところが、まだ1ミリも進んでいない。トイレに行ったり、カーテンの隙間から見える、師走の曇り空を眺めていたら、無為に1時間が過ぎてしまった。

気合い。ただそれさえあれば、1時間で片付けられる。室内は旧式だがそこそこの火力をもつ石油ストーブで適度に暖かく、気密性に優れたマンションの一室に、冷気が入り込む余地はない。

ちょっぴりの勇気さえあれば、即座に動き出して、瞬く間に片付けて、ゆっくりコーヒーを飲めるに違いない。お湯はすでに、石油ストーブの上のヤカンの中に、たっぷりと蓄えられている。

とりあえず、床に散らばっていた本を一箇所にまとめてみた。熟練のブックオフ店員ならば、この程度の冊数を本棚に戻すことなどチョロいものだろう。


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やはり、キチンと並べ替えて元に戻すべきだろうか。あるいは順番など気にせずに、本棚に入れてしまうべきだろうか。答えのない自問のまえに、僕はただ立ちつくしている。

そうだ。これを写真に撮ってブログを書こう。僕は乱雑に掃き集めた本の前にしゃがみ込み、パチリとシャッターを押した。

中央で綺麗に写っているのは、白幡洋三郎の「プラントハンター」である。僕が持っている唯一の学術書であり、お気に入りの一冊だ。

プラントハンター (講談社学術文庫)

プラントハンター (講談社学術文庫)

総合病院の裏路地にある、ブックオフじゃない方の古本屋で350円で手に入れた。その日は、朝からお腹の調子がわるく、何度もトイレに行かなければならなかった。

プラントハンターとは、ざっくり言うと、未知の植物を探す人たちのことだ。職業ではなく、人たちと書いたのは、本職のかたわらで植物採取を趣味とする知識人がいたためである。

19世紀のイギリスは、その国力を背景に、世界各地に進出していた。そこで発見した、未知の花や珍しい樹木をロンドンへ持ち帰り、うまく栽培しようと目論んでいた。

長い船旅で植物を持ち帰ろうとすると、花や樹木は、潮風にさらされ、あっけなく枯れてしまう。そこで考案されたのが「ウォードの箱」だ。

また、その当時の日本の「キク」が、海外で高く評価されていたことや、イギリスの園芸にかける情熱のルーツまで、つぶさに知ることが出来た。


いかん。あれから更に1時間が過ぎ去ってしまった。掃除をしようと決意してから、都合2時間をロスしてしまった。いや、ロストしてしまった。

ようし。やるぞ。ともかく服を洗濯機の中に入れてしまおう。洗濯機が回っている間に、あれこれ片付けるのはどうだろうか。

いや、待てよ。まずは流しの洗い物を片付けて、干してある洗濯物を畳むのが先決ではないだろうか。その2択を眼前にぶらさげて、僕はまた立ちすくんでいる。



どうでもいいから、これ書くのやめよう。


おわり