こんちは。ライターのチルドです。
僕が初めて「初日の出」を見たのは10歳のときでした。その体験があまりにも悲惨だったので、書こうと思います。
僕は小学校のとき、サッカー部に入っていたんですが、年末の練習が終わったあとに、カントクが初日の出を見に行くメンバーを募ってたんです。
聞いたら、集合場所が家の近所だったので、僕も手を上げました。カントクと、6年生が7人、4年生は僕ひとりでした。
元旦の朝
僕は、元旦の朝、5時の時計のベルで起きて、着替えて出かけました。
集合場所には、もう6年生が4〜5来ていました。でも、なぜか、みんなサッカーのスパイクをはいて、水筒を持っていたりするんですよ。
その時は、このあと練習でもするのかなと思っていました。
そしたらキャプテンが、お前それで大丈夫かって言うんです。何が大丈夫なのか分からなかったんですが、とくに眠くなかったので、僕は大丈夫ですと答えました。
そして、5時半には、みんな揃っていました。あとはカントクだけなんですけど、5時半を過ぎても来ないんです。みんな、ちょっと心配そうにしてたんですけど、すぐ車の音が聞こえてきました。
カントクは、自家用車のセダンでやって来ました。でも、この人数だと、どう見てもみんな乗れないんですよ。
僕は、どうするんだろうと思っていたら、カントクが車から降りてきました。で、みんな揃ってるかー、って聞いて、じゃあ行くぞって歩き始めたんです。
僕は、え?車こっちなんだけど…って思ったんですが、みんなカントクに着いて行くから、僕もあわてて後を追いました。
登山開始
もう分かったと思うんですが、これ、初日の出を見るっていうより、登山だったんです。なのに僕は、半袖短パン姿に、学校の上履きみたいな紐のないクツなんです。
それでも、最初は大丈夫でした。でも、進むにつれて、道がどんどん悪くなって行きました。アスファルトの道から砂利道へ─。コンクリートの階段から木の階段へ─。
5分も歩いたら、もう完全に山道です。大っきい石や、小さい石が散らばってる、完璧なけもの道ですよ。
しかも、まだ暗いんです。6時だから真っ暗ではないんですが、夜ですよ。夜の山道に、みんなの足音と、荒い息遣いだけが聞こえています。
僕は途中で、うわぁ、もうムリ、帰りたいって、心で泣きながら、必死で着いて行きました。ひとりで帰れないから、もう着いていくしかなかったんです。
しかも、だんだん進むスピードが上がってるんです。僕が小走りになるくらいの速度でぐんぐん登って行くんですよ。
たぶん、カントクは遅刻したから、時間に間に合わずに初日の出を見逃しちゃいけないと思ってペースを上げたんです。容赦なく速度をあげていくんです。
ちょ、待てよ、こっちは10歳の子供だぞって、泣きながらカントクを呪いました。でも、こんな山道に置き去りにされたらヤバイから、過酷なペースに必死で着いて行きました。
足もとは、石がゴロゴロしてるので、何度も転びそうになって、足はパンパン、スネは木の枝で傷だらけ、足の裏には激痛が走ってました。
たぶん、距離はそんなになかったんです。でも大人の山登りペースは、10歳の子供にはヒド過ぎました。
山頂到着
地獄のような30分が過ぎて、やっと頂上につきました。そこで、初日の出を見ました。
カントクは一人ではしゃいでましたけど、僕はもうそれどころじゃなかったですね…。6年生もけっこう疲れ切ってました。
しかも、その後、僕はお腹が痛くなって、トイレじゃないところで、う○こするハメになりました。あれって草がグサグサ突き刺さるんですよ…。当然、紙も無いので、クツ下で拭くしかありませんでした。
そしてまた、来た道をヒイヒイ言いながら下っていきました。もともと半袖短パンだったのに、さらに素足で山道を下りるんですよ。しかも元旦って、いっても冬ですからね。これ、どう見ても虐待です。
山道からアスファルトの道になったときは、リアルに、助かった…って思いました。
回想
まー、ちゃんと確認してから、行くかどうか決めればよかったんですが、10歳の僕には、まだ、そこまでの知恵もありませんでした。
それに、途中からサッカー部に入ったので、このイベントが山登りって知らなかったのは、僕だけだったんです。
それでも良い経験だったのかも知れません。人生で初めて必死になった出来事でしたからね。
初日の出があまりにも悲惨だった…という話でした。