ボーナスが消えた日

*会社の2階にある小部屋に呼び出されたのは、去年の5月だった。神妙な顔で、スチールのイスに座った社長は、僕に向かって、おもむろに会社の経営状態を語りはじめた。赤字だ、時代だ、売上の減少だ─。いろいろ喋っていたが、それは僕の耳を、右から左へと通過していった。業界全体が不況であることは10年前から分かってい…