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拝啓、ちるろぐへ(最終章)

足早に駆け抜けてきた幼少期ストーリーだけど、もう最終章。あえて年齢は省いてたけど、4才〜8才くらいだったと記憶しているよ。

ともかく、本能の命じるままに生きていた。そこには、原始の生命力に満ちあふれた、本能のキラメキみたいなものが感じられるんだ。

令和の時代に失われたパッション、昭和の残党の矜持を胸に抱きながら、最後まで走り抜けたい。

花火を分解する

花火ってキレイだけど、ちょっとお上品というか、パンチに欠けるよね?

だから、いっぺんに10本束にして、一斉に着火したら派手になるかもって、そう思うよね。

でも、それをやろうとすると、絶対に誰かに邪魔される。だから考えたんだよ。花火を分解して集めた粉を、いっぱい詰めたら、ずっと火を吹く無限の花火を作れるんじゃないかって。

あのころ、どこの自販機にも、ビンの炭酸飲料が売っていて、その300mlのまあるいビンに、分解した花火の粉を、パンパンに詰めこんだ。

そんで、爆竹の束をバラして、長い導火線をくっつけた。お手製花火の完成なんだ。

思い描いたイメージとしては、着火したらビンの口から、バァーって、虹色の火花が出るというかさ、とにかく長く楽しめる作品になると思ってたんだよ。

でも、現実はそんな甘くなくって、導火線に火をつけて、ちょっと離れてワクワクしてたら、バーン!て爆発しちゃった。一瞬の出来ごと。ただの爆発。ビンの破片も散らばって危なかった。

これも、どこかの大人に見られてたらしくて、後から問い詰められたけど、何のことかわかんないって、しらばっくれて、やり過ごしてた。

着替えられない子

小さいころ、執着が異常で、おなじ服しか着られなかった。硬い服っていうのかな。エリのついた服とか、動くのが窮屈になる服とかがダメなんだよ。

着替えさせようとしたら、暴れちゃって、言うこと聞かないの。いつも着てる、ボロボロのパジャマみたいな、海外のストリートチルドレンが着てるようなの。あれが大のお気に入りだった。

母親は、どうにか着せようと頑張ってたけど、ぜんぜん着ないし、父親は、それがいいなら、それでいいじゃん、って感じで、とにかくいつも薄汚れていた。

お風呂はちゃんと入れたんだけどね…。

児童保護の職員に目をつけられる

学校の先生、スーパーの店主、クリーニング店のおばちゃん、近所の人たち、たぶん、その中でも意識高い系の誰かが、しかるべき機関に、しかるべき通報をしたっぽくて、家に調査官みたいな人が来ちゃったんだよ。

お宅、虐待してませんかってさ。言われてみれば、僕はいつもアザだらけ(無謀なチャレンジで生キズが絶えない)一年中おなじ服を着てる、夜遅くひとりでウロウロ、大人に悪態をつく、他所の空き瓶をパクって換金してる…。

目をつけられて、疑われても致し方なしってところ。

僕が自発的にやってる活動なんだけど、調査官が帰ったあとは、両親ともしょんぼり。だって、まだ2人とも、20代くらいで、社会経験もあんまりなかったから、いろいろわかんなかったんだと思う。

かんしゃく玉を車道にまく

僕が小さいころ、花火とか爆竹とかと一緒に、かんしゃく玉っていうのが売ってたんだよ。今もあるのかな…。

カラフルなパチンコ玉くらいの大きさで、地面に転がして、思いきり踏むと、パーン!って、景気の良い破裂音が鳴るんだよ。

これを使ったイノベーションはないかな、って考えてたら、閃いた。よし、車道にまこうってさ。

5袋くらい仕入れて、わざわざ、商店街よこの交通量の多い交差点まで歩いていって、そこにひと粒、置いてみた。

やっぱ、クルマのタイヤは良いよね。圧縮強度が段違いなせいか、僕が踏むより、はるかにデカい音が響くんだよ。まるで銃声のようさ。

感動した僕は、2袋くらい(10発)いっぺんにまいてみたんだ。そしたら、信号が変わったとたん、パン!パパン!パンパンパン、パーン!!みたいに、まるでお祭りだよ。

そうなると、さすがに大人たちも動き出して、車から降りて来たりして、ちょっと雲行きが怪しくなってきた。

だから、残りの3袋を適当に放って、そこから離れたんだよ。

あとで聞いた話しでは、そこら辺にいた子どもが、手当たり次第に捕まって、お巡りさんに尋問されたんだって。だれかポリスに電話したんだろうね。

僕はもう高飛びしてたから、ぜんぜん平気だった。

高級外車にキズをつける

とにかく、家でじっとしていられなくて、用事がなくても自転車でどこかに行っていて、その日も学校から帰ったら、すぐに自転車で出かけたんだよ。

あ、そうだ、ボール持っていこ、って思って、急にハンドル回したら、けっこうスピード出してたクルマに、カゴが当たって、すごい音と火花が出たんだよ。

その音を聞きつけた父親が、家から飛び出して来て、クルマの運転手も降りてきて、マズイことになったな、って思ったの。

見たら、赤い外車の助手席側に、ガッツリ傷がついていて、ウチの父親も絶望的な顔をしてたんだよね。

そしたら、運転手の人が、ケガ無いですか?って聞いてきて、自転車、弁償します、みたいに言ってて、もともとボロボロの自転車だから、そんな必要もなくて。

でも、父親が、車すごいキズですよって言ったら、運転手の人は、ぜんぜんいいです、ケガなくてよかったです、とか言って去っていった。

父親は弁償をまぬがれて、心底嬉しそうだった。親子で、よかったね、よかったなって、肩を抱き合ってハートフルなドラマの1ページみたいだった。


※ ※ ※ ※


とりあえず、こんなところかな。

僕は、おそらく、なんらかの疾患かネグレクトか、あるいはそのタッグを内包していたのかもしれない。でも、それで不幸だったのかと言われると、そんな事はまったく無くて、むしろ世界の喜怒哀楽を体現した、とても純粋な結晶だった。

高度に管理された現代社会では、行動は監視され、言葉は縛られ、逸脱には代償を要求される。そんな世界に逆張りし、NOを突きつけ、失われたDNAを取り戻すべく、僕はこれからも生きていく。

成功者は、幼いころに自分が成功するビジョンをイメージすると言うけれど、僕は幼いころから、自分は失敗する。小さな罪で大きな罰を受けて、憐れまれるような最期をむかえると確信していた。

それは、深夜のバーの裏路地で、酒と小便の混じった血溜まりで無残に倒れる姿。あるいは、ビルの吹きだまりに、溶け残った泥だらけの雪のように、やがて黒い液体となって排水溝に落ちていく。そんなビジョンを、僕は幼少期からイメージしていた。

ろくでもない人間。ろくでもない人生。

そんな確信めいた宿命を背負っても、僕はまだこうして生きている。50年も生き延びている。

次回は、その秘訣を伝えるよ。


拝啓、ちるろぐへ(前編) - ちるろぐ
拝啓、ちるろぐへ(中編) - ちるろぐ
拝啓、ちるろぐへ(後編) - ちるろぐ