──このさき、どうすればいいんだろう──
フェンスごしに、春の風が吹く昼下がり、僕は、誰もいない公園のベンチに座って、キセルをくわえながらつぶやいた。
ことしの1月に、のべで25年続けてきた仕事をやめた。それから3月まで家で寝ていて、4月からあたらしい会社へ働きに出たけど、5月の半ばで退職。
ハローワークから再就職の見舞金が100万円振り込まれていて、まるで雇用保険金を詐取するようなカタチになってしまったけど、あくまで結果論。
ちゃんと働く気だったけど、あたらしい会社の条件が、僕とミスマッチだった。辞めたくて辞めたわけじゃない。
合法と詐欺をへだてる境界線は、とても繊細だ。湖に、薄く張った氷のように、曖昧で、自然に溶けることもあれば、気まぐれに投げた小石で割れてしまうこともある。
ガラスの少年時代から、30年が経ってしまった。昭和に生まれた僕は、令和で道に迷っている。平成は、またたく間に過ぎ去って、なんの爪痕も残せないまま、僕の中に足跡ひとつない新雪ように横たわっている。
めぐる時代に、流される木の葉のように、令和にさまよっている。ふり返れば、はるか遠く見えるはずの故郷が、僕の場合は、まだそこにある。
すごろくでいうところの、ふりだしに戻る状態。何もかもがリセットされて、イチから始めるドラクエのように。
もう、やる気はない。
クソゲーだ。