ちるろぐ

ここが僕のアナザースカイ

無敵になる

小学生のとき、放課後に家でテレビを見ていたら、パトカーで移送されてゆく少年の様子が流れていた。その少年は、人をあやめた罪で捕まったのに、無表情で大人に殴られることもなく、乗り心地のよさそうなシートに座っていた。まるで罪人の気配もなく、むしろ多くの大人が少年を守りたがっているようにみえた。

たとえば僕が、ふざけたり騒いだりすれば、たいていの大人から叩かれ、反抗的で従わなければ、容赦なく殴られた。つまり、子供が悪事を働けば大人が暴力を加えるのは必然だった。ところが、テレビのなかの少年は殴られていない。叱責されるでも罵倒されるでもなく、ただ車に乗ってピクニックでも出かけるような雰囲気だった。

なんでだろう。なんで少年Aは殴られないんだろう。あんな大きな罪を犯したのなら、すぐさま引き倒して立てなくなるまで殴るべきじゃないのか。僕はその矛盾がまったく理解できなくて、ただ混乱していた。

要するに、これから裁判があり、詳細が明らかになり罪が確定するまで、少年が殴られることはない。きっと、裁判官がちゃんと理由を聞いて罪を決定するんだろう。だけどやっぱり少年は殴られない。誰も少年を殴り倒すことができない。

司法は無力だと思った。

微罪なら理由も聞かずに殴られるのに、大きな罪を犯せば、警察や司法が耳をかたむけ理由を聞き、守ってくれる。僕はその現実を目の当たりにして、もしも将来、罪を犯さなければならないとしたら、世間が震えあがるような大罪をやってやろうと決めた。

そして警察や司法の権力をもってして、暴力から身を守るんだ。