ちるろぐ

ここが僕のアナザースカイ

すみだ水族館とまぼろしの少年

東京旅行記、3話目はじまるよー。

今回は、スカイツリーの近所にある「すみだ水族館」に行ってきたよ。

ところで、東京へ旅するとき、なにが一番大切か知ってる?

新宿駅の出口を確認する、駅の路線図をチェックする、目的地の場所を必死に覚える。

それらは、どれも間違いではないけれど、本質的とは言えない。東京でなにかしようとするとき、最も重要なのは「予約」なんだよ。

ともかく、目的地の施設が決まっていて、それが予約可能ならば、必ず予約しておく。それが東京という街の隠されたルールなんだ。


前置きが長くなったけど、その予約のおかげで、僕らは「すみだ水族館」へ、スムーズに入場できた。



となりの入場ゲートでは、予約を知らない観光客が、いつ果てるともない順番待ちの列をなしていた。抱かれた幼子が、レミングのように悲しげな目をしていた。

やっぱ予約って大事だよ…。そんなことを思いながら、僕らは入場ゲートをくぐり抜けた。

すみだ水族館は、クラゲのメッカで、それこそ世界中の、ありとあらゆるクラゲが集まっていた。サカサ、ジェリー、タコ、イカ…。大小さまざまなクラゲが飼育されていたけれど、僕の印象に強く残っているのは、逆さになって息絶えたクラゲだった。

ライトアップされた水槽の底に、透明な傘をグニャリとつけて、制御を失った幾本かの触手が、水流にあおられ、ゆらゆらとたゆたっていた。


クマノミなんかの、珍しい魚が展示されたブースを抜けると、中央に大きな池のある、広い空間へ出た。池には、なん匹ものペンギンが元気に泳いでいる。

その周りには、これまた珍しい金魚がいたり、ワークショップがあったり、イートインスペースがあったりした。丸いソファで、親子連れが、ペンギンパフェを食べていた。

その様子を、ビールでぼんやりした頭で見ていたら、僕が食べかけていたペンギンワッフルソフトが溶けて、テーブルから流れ落ち、フロアの絨毯に大きなシミができていた。

ワッフルソフトのワッフルが、あまりにも砂糖甘くて、食べ切れなくて、テーブルに置いちゃったんだ。そしたらこのザマなんだよ。僕は、残酷な運命から逃れるようにして、その場をあとにした。

やっぱり、水族館は、親子でくるべきなんだろうか。僕は、今日、会ったばかりのお母さんと並んで歩きながら、なぜだか無性に手をつないでみたい衝動にかられた。もしも僕が少年ならば、その手をつないで、足下をぐるぐるまわって、最高の笑顔でいられたかもしれない。

しかし、現実には、手もつなげずに、176cm、体重80kgの無残なおじさんが、階段で息を切らしているのだった。


(パソコンが壊れているため、写真は後日アップします)