このまえ、お客さんから本社へクレームを入れられて、僕のイスが撤去されたって話をしたよね。
あのとき僕は、クレーム電話の主を、密告、犯人と呼んで、リベンジするなんて言ったけど、あれはもちろん、冗談だよ。
ふんぞり返って寝ていたのは、まぎれもない事実だから、クレームは顧客からの率直な意見として、真摯に受けとめている。
ただ、ちょっと腑に落ちない点が2つあるから、今日は、それについて話したい。
ひとつは、誰が通報をしたのかってこと。いや、誰でもいいんだけど、特定できないのは、やっぱり不気味だよ。
しかも、うちの職場のお客さんは、ほぼ同じ連中なんだ。つまり、日ごろから顔を合わせている、顔見知りが通報してるんだ。
想像してみてほしい。
あなたの職場で、ふだん関わりのある取引先の誰かが、あなたが仕事をサボっていると、なんの証拠もなく社長に電話している姿を…。
まぁ、それは、ひとまず忘れよう。考えてもしょうがない。
問題は2つ目で、僕が客に恨まれてるってことなんだ。
店にクレームを入れるとき、電話するまえには、やっぱり人間、躊躇するものだよ。ナンバーディスプレイもあるから、なかなかカンタンに通報できるもんじゃない。だから、よっぽど腹が立たないと電話まではしないものなんだ。
つまり、それだけ僕が恨まれてるってこと。
それがとても悲しい。
お客さんに不利益になる行動を、僕が日頃からとっていたら、ぜんぜん平気だけど、そうじゃない。
僕は、常連のお客さんに対しては、けっこう全力でやってきたつもりなんだ。商品はきちんと揃えておくし、お客さんが結果として不利益になるような商売はしない。売上のために、その場限りで、売り抜けるような商売はしていないんだ。本当だよ。
ただし、お客に良い顔ばかりするんじゃなく、会社の利益を損ねないように、ときには毅然と断る場合もある。
つまり、お互いにとって、利益になる取引を心がけてきた。それが本当の仕事ってもんじゃないか。
今回のクレームは、僕のそういうスタンスが、お客に伝わらなかった。というか、全否定されてしまったようで、とても悲しい。
仕事ってのは、お客の要望と会社の利益を調整して、お互いにとってより良い未来を作っていくことなんだ。
要求ばかり押しつけてきたり、なんでも言いなりになったりするのは、仕事じゃない。
そうだろう?
犯人は必ず捕まえてみせる。