フミコさんの再就職が決まったらしい。
聞けば、前職の経験を活かして、半日で企画書をまとめトップにプレゼンして、めでたく採用になったとか。オマケに今度はホワイト(まとも)な会社で、ブラック(理不尽)な前職とのギャップで戸惑っているとも。
僕は、自慢げなフミコさんの話を聞きながら、正直、手の震えが止まらなかった。このまま、フミコプロデュースのプロジェクトがトントン拍子にいって、華麗な転身を遂げるような事態になったら、事あるごとに、武勇伝を聞かされそうだから。
リクナビもジョブセンスも、エン転職だって黙っちゃいない。なぜそんな行動力を発揮してしまったんだ、フミコさん…。
僕はフミコさんに、深夜の寒風吹きすさぶ人気のない工事現場で、力なく誘導灯を振っていてほしかった。そして、ゆくゆくは無職になり、家族に邪魔者にされながら生活してほしかった。団塊ジュニア世代の、落伍者の星として、輝き続けてほしかったんだよ。
一方で、フミコさんの人柄と実力、それから仕事に対する真摯な姿勢が正しく評価されて、嬉しい気持ちもあって。長くて暗いトンネルを抜けた、雪国のように純白な景色。そんなピュアホワイトこそ、フミコさんにふさわしいポジションなのだとも。
ともかく、めでたい話で、フミコさんにはその実力を存分に発揮して、人を笑顔にする仕事をしてほしい。
切にそう願ってる。
ひるがえって、自分の転職に思いを巡らせると、暗澹とした未来しか見えなくて。もしも今、会社を辞めたら、再就職は難しい。生活していくお金は必要でも、もう会社勤めをするモチベーションがなくて。
社会には、無駄に残業しても、お金がほしい人もいれば、仕事が残っていても、無責任に帰る人もいて。もらう対価が同じでも、満足する人もいれば、不満な人もいて。
日々の業務に忙殺されて、心を失う人もいれば、企画を売り込んで、新規事業の責任者として高額報酬で飛び込んでくるスーパーマンもいたりして。
もう、そんなことを考えるのが、嫌になってしまって。
そういう世界とは、無縁になって、穏やかに、ゆるやかに暮らしたいなあと、そう強く願う。
今日はそんなところです。