ワケあって同居している女性(69歳)の様子が、ちょっと変わってきている。正確には四年ほど前からで、変化の度合いは年々強まってきた。
よく、年をとったら丸くなる、なんて言うし、僕も、若い頃に比べたら、考え方に幅が出て何事も落ち着いて対処できるようになった。
ところが、同居中の女性は、年々アグレッシブの度合いを増してきて、その変化には、僕もいささかの不安を感じている。
今日は、その辺りを整理して、傾向と対策を考えていきたい。
他者への不寛容
彼女は、かなりのお人好しなので、不義理を受けてもたいてい許してしまう。それも今は過去になってしまった。ここ数年は「絶対にゆるさない」「必ず痛い目にあわせる」など、過激な発言が目立つようになった。
もちろん、それは感情面の話で、実際に行動へ移したりはしないけれど、ちょっと不安になる。
噛み合わない会話
おしゃべりの好きな彼女は、誰とでも会話してすぐに打ち解けるのが得意。いっぽうで僕はコミニュケーションが苦手で、昔から、彼女の傍らで、その会話を黙って聞いているのが常だった。数年前までは…。
ところが、最近になって、となりで聞いていても「
?」と、なることが多くなった。どうも会話していると自分の感情が優先するようで、話の内容が相手と噛み合っていない…。
うまく説明できないけれど、つまり、相手の話をよく聞かずに、自分の話したいことをしゃべってしまう。以前は、そんなことが絶対になかったから、ちょっと悲しい。
年金への激しい怒り
彼女は、65歳から年金を受けとっていて、それが昨今の社会情勢のあおりで、受給額が目減りしている。介護保険料というような項目が追加されて、天引きされているらしい。それは、ある面、仕方のないことだと思うし、増加する医療費は国民全体の負担でもある。そして彼女自身だって、そのお世話になるかも知れないし、それは本人も理解していると思う。
しかし、理由はともかく「年金が減る」という事実に対する怒りというか、怨嗟の熱量がハンパない。ちょっと年金の話題が出ると、その怒りが爆発して、口角泡を飛ばして厚生労働省を罵倒しはじめる。
ただしこれは、彼女に限ったことじゃなく、年金世代全般の共通感情なのかも知れない。もしも政治に関わる職業の方がいたら、年金については、くれぐれも慎重になった方がいいと伝えたい。
身勝手な運転
彼女の自慢のひとつに、免許証の帯がゴールドというのがある。これは、無事故無違反を続けると優良運転者になって、更新手続きの時短などの恩恵を受けられるもの。彼女は、たしかに無事故無違反ではあるけれど、ここ数年、助手席からその運転を見ていると、ヒヤヒヤする場面が多い。
まず、車間距離を詰めすぎているし、ブレーキのタイミングも遅い。その理由は、老化による反応速度の低下ではなく、他のクルマを入れないタメだと言う。だから、たまに割り込まれると、それを口汚く罵る、声を荒げるなどする。
また、路地のせまい交差点では、大回りせずに曲がるので、バイクなどの対向車が来たら危ない。そして僕が、内輪差について指摘すると、クルマの性能が悪いと言い出す始末で、手に負えない。
加速する健康志向
料理が好きというのもあり、食と健康へのこだわりが強い。中でも、特にこだわっているのが、三食を規則正しくとるということ。たしかに、キチンと食べるのは大切なことだと思うけれど、問題はその量で、食べ過ぎたら肥満になってしまう。一日中、家で過ごす場合は、どこかで一食抜くか、軽めにして、食べないという選択肢もある。
他にも、食材の爆買いや、冷蔵庫をパンパンに詰めて壊すなど、食に関するトラブルが絶え間ない。
傾向と対策
こんな感じで、彼女の場合は老化というか、感情面だけで言えば、幼児化の一途をたどってしまっている。では、どうすればいいのかと考えるのだけど、良い解決策も思い浮かばず、難儀している。老化現象と言ってしまえば、それまでだけど、どこかでブレーキをかけてあげないといけない。
むずかしいけれど、結局のところ、本人次第なのだろうか。
とは言え、いつもこんな調子ではなく、たいていの時間は気分良く過ごしている。
朗らかで、誰からも好かれ、いつも笑顔だ。
僕は彼女が、どんなにワガママになっても、愛おしく思うし、これからもずっと寄り添って生きていきたい。