生まれて初めて東京の「新宿」にやってきた。
「人波に飲まれる」って表現があるけど、新宿こそ、その言葉がピタリと当てはまる、人の奔流だよ。見渡す限りの人の群れ。
歩道だってこんなに広い。世界中を探しても、人が流れるためだけに、これだけの空間が必要な場所って、きっと見つからないよ。
それから新宿には、全面がアスファルトで舗装された公園があるんだよ。おまけに柵で囲まれているんだ。
人を中にいれて、外から閂をかければ、人間動物園になりそうじゃないか。あわわ…。
それから、とても落書きが多い。こちらはバス停なのに、ベンチも案内板もシールと落書きで埋まっている。
とくに酷かったのが、駐車場のカベと、飲食店の裏口など。室外機などの塀面が、スプレーで汚染されていた。
だれも、どうにかしようと思わないのかな…
この街は、空気が薄くて、二酸化炭素が多いような気がする。たぶん、人がいっぱいいるせいだよね。
東京人は冷たい
人が多いせいだと思うけど、東京人はなんだか冷たいよ。僕がコンビニでトイレを借りるとき、店員さんに声をかけたら、こっちが「すいません、トイ」まで言った瞬間に「どうぞ」と返事してきた。こっちが言い終えるまえに、言葉をかぶせてきたんだよ。
つぎに、ホテルで傘を借りようと思って、「あのー、このか」まで言ったところで、「はい!どうぞ!」と、かぶせてきた。まただ。
たぶん、人が多くて、同じことを何万回と聞かれるから、即座に返事してるんだと想像する。それに、僕がトロくさいから、余計に東京人をイライラさせてしまうのかも知れない。
初日に行った、東京体育館プールでは、発券機でカードを買ったのだけど、僕がキョロキョロしていると、「そこにカードを通せ」と、言葉ではなく視線で伝えてきた。もう、説明というか、話すのにも飽き飽きしてるんだろうね。
Suicaの有無でお里が知れる
電車やバスを利用すると、Suicaを持たない僕は、非国民になる。東京の乗り物では、電子マネーが共通言語になっていて、物理コインを使うのは、僕だけなんだよ。おまけに、僕がお金の投入口に迷っていると、目の動きで指示されてしまった。なるほど、たしかにそう書いてある。お前は字が読めないのか? というリアル「ググれカス」状態で、どうにもやり切れなかった。
一事が万事、こんな感じで、東京人って冷たいなって思ったよ。
SNSが無力
今回の旅は、理由(わけ)あって、ノープランで来てしまったから、ちょっとでも寂しさが癒やされれば、と思ってツイッターで呼びかけてみた。僕のフォロワーは、1000人を超えていて、統計からすると、そのうちの3割は東京人だと考えていい。
つまり、300人に向けて発信したのだから、僕がポジティブなリアクションを期待したのは、けっして間違いじゃない。ところが、まともにレスポンスしてくれたのは、わずか1人だけだった。
他にも気づいてくれたけど、リツイートやいいねばかりで、まるっきりスルーだった。
それはまるで、派手に転んだひとを、遠巻きに見守って、立てなそうだったら119番へ電話する、というような、どこか他人事のスタンスだった。
僕は、東京人がすべて薄情だとは思わない。しかし彼らには、相手の困難度を値踏みして、さほど困ってなさそうだったら、あえて手は貸さない、というようなドライさがある。
そんな眉間にシワ寄せないでよ。
僕は、感じたこと、見たことを、正直に言ったまでだよ。
東京は、殺伐としていながら、人がゴミのように溢れる、不思議な都市だった。