理想の親ってなんだろう。
僕は独身で、この先も独身のままで、きっと戸籍には丸もバツも付かずに終わっちゃうんだよ。
だけど、ときどき夜空の星を見上げて思う。僕にも子供がいたら、もっと充実した人生を送れたんじゃないかって…。
公務員のTさん
人見知りに定評のある僕だけど、唯一、話しかけられるのがTさん。Tさんは市役所で働いている男の人。僕より3つ年上の43歳。知り合ったのは、通っているスポーツジム。息子さんが水泳を習っているから、自分も入会したらしい。
Tさんは、とにかく人あたりが良い。太ってはいないけど見事なビール腹で、いつも快活。いつも笑顔で安定してる。
僕の話もよく聞いてくれて、トライアスロンの練習にも誘ってくれた。
そんなTさんの息子さんも、一緒にトライアスロンをやっている。だから、ジムで水泳やランニングマシーンをやって、クルマでも片道40分もかかる道のりを、自転車で通勤したりしている。
Tさんのお嫁さんにも、たまに会う。穏やかなぽっちゃりタイプの癒し系。お母さんになるために生まれてきたって感じ。趣味はアメーバピグ。
Tさんの子供
そんな両親に育てられたTさんの息子は、いま高校1年生。僕は中学2年生のころから知ってるけど、ホントにいい子なんだよ。他の子のように、屈折したところがなくて、僕があげた「フルーツどっさりゼリー」も、食べましたーとか言ってくれて。
子供って、親にお礼を言っておくように、なんて言われると、有難うございました、みたいな型にはまった物言いになるものだけど、違うんだよ。
Tさんの息子は、食べてる、食べてる、と言ってくれて、これは「有難うございました。美味しかったです」なんてのより、ずっと素直で感じがいい。
あの両親に育てられれば、やっぱり真っ直ぐ育つんだ。そんな現実を、まざまざと見た。
親のライセンス
翻って(ひるがえりたくないけど)、僕はなんだろう。ゲームばかりやっていて、仕事には誇りをもてなくて…。人付き合いは苦手。声も小さい。休みの日には、スマホを見ながら、ひとりでニヤニヤ。
勉強はぜんぜんダメで、成績表は1と2ばかり。二十歳から四十歳まで、失われた20年を子供の延長線上に生きてきた。
口癖は「お腹すいたー」と「きょうご飯ある?」だよ。
ホントに、ときどき、自分が子供のまんま来てしまったことにハッとしてしまう。
子供は親の背中を見て育つと言われてるけど、僕は、基本的なことがなってない。モラルを持つとか、約束を守るなんてことが…。
僕には、親になる資格がない。