こんちにちは。975人の読者から熱烈に支持される売れっ子ライターのチルドです。
小学校のときの話です。
僕のクラスの担任だった小川先生は、ちょっと神経質な笑い方をする、30代の女性の先生でした。
ある日の給食の時間のことです。いつものように、僕たちが、わいわいとおしゃべりをしながら給食を食べていると、前の引き戸をガラガラと開けて、担任の小川先生が教室に入って来ました。
先生はいつも給食の時間は、少し遅れてくるので、誰も気にする生徒はいませんでした。そして小川先生は、いつものように、教壇の席に座り、みんなと同じように給食を食べはじめたのです。
そのときです。
先生がとつぜん、アーッと悲鳴をあげたのです。
クラスのみんなは、一瞬、会話を止め、一斉に教壇に目を向けました。
そこには、箸をもった手を、わなわなと震わせる小川先生の姿がありました。
僕には、まったく、事情が飲み込めず、小川先生の硬直した視線の先と、震える箸を、交互に見ていました。
「あたしのシューマイが無ーい!!」
小川先生は叫びました。
そうなのです。今日の給食のおかずは、シューマイだったのに、小川先生のトレーには、なぜかシューマイが配膳されていなかったのです。
僕はそれでやっと事情が飲み込めました。同時に、今日の給食の当番が、自分では無かったことに、ホッと胸を撫で下ろしていました。
ホッとしたのも束の間、今度は小川先生が大きな声で泣き始めたのです。
「あ、あたしのシュー、マイ、ひっく、ひっく、シューマイが、シューマイがなーい!」
僕は驚きでポカンと口を開けて、先生を見つめていました。他のみんなも、いったい何が起こったのか、まったく理解できずに、泣きじゃくる小川先生を見ていました。
すると、騒ぎを聞きつけた、となりのクラスの先生が入ってきて、泣き捲くる小川先生を教室の外へ、連れ出して行ったのです。
それっきり、小川先生は、学校に来ることはなく、担任も変わってしまいました。そして、年度末には、学校の先生を辞めたらしいと聞きました。
原因は、もちろん、シューマイが無かったことではなく、クラスの指導について悩んでいた、とのことでした。
そう言われてみると、小川先生が担任になったクラスは、授業中に生徒がグラウンドで遊んでいたりした記憶がありました。
今で言う、学級崩壊のような状態だったのかもしれません。そして、小川先生の積もりに積もった苦しみが、シューマイを引き金にして爆発してしまったのでしょう。
僕は今でも、シューマイを食べるたびに、優しかった小川先生を思い出して、すこし泣いてしまうのです。
乱文ご容赦くださいませ。お読みいただき、ありがとうございました。
今週のお題「給食」