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こんちは。チルドです。
初めて満員電車に乗ったよ。人があんなにすし詰めになってるなんて面白いよね。とても人間の乗り物とは思えなかった。まるで家畜運搬車じゃないか。これで通勤なんて僕にはゼッタイ無理だよ。そもそも毎日、同じ時間、同じ場所に集まって仕事するって、意味あるの?
近ごろの若者たちは、そんなふうに感じているらしい。無条件に守られて育った平成生まれだから、そんな疑問を持ってしまうんだろうね。もしかしたら幼少期のトラウマで人の密集が耐え難い苦痛になってるのかも知れない。
photo by onkel_wart (thomas lieser)
走り続ける満員電車
人々がどんなに悲鳴をあげても満員電車はなくならない。どんなに押し潰されても、カバンがペシャンコになっても満員電車は走り出すよ。
なぜなら満員電車の乗客は、満員であることに満足しているからだよ。むしろ満員であることに価値を感じている。
試しに満員電車に乗る人に、その理由を聞いてみてよ。ハッキリとした答えは返ってこないと思う。それはメリットの自覚が無いからなんだ。
・満員電車の混浴効果
都会のようなせまい土地。そこに人々が密集すると、人は逆に無関心を装うようになる。近所で出会うたびに挨拶してたらキリがないからね。日本の江戸しぐさに代表される、儀礼的無関心の所作なんだよ。だけどそれは、快適であると同時に心の距離も遠ざけてしまう。
精神的な距離が離れてしまったとき、人は満員電車に乗るようになる。満員電車の限られたスペースに身を投じて、物理的に人と触れあうことによって、精神的な癒しを得ているんだよ。
・苦行の共有
宗教的に言うと、大勢の人が同じ車両でおなじ方向へ進んでいるというのは、ある種の安心感があるんだ。苦痛を共有することで、安易な共感を得られるからね。これから就活というときに江ノ島へ向かうのではなく、皆とおなじように満員電車に乗ることで、理想的なバンド・ワゴン効果を得られるんだよ。
・自己啓発作用
満員電車で通勤していると言えば、人から大変そうって思ってもらえるよね。それがポイントなんだ。「耐えるだけで乗り越えられる試練」を設定することによって、頑張っている感を上手に演出できる。
なぜそんな演出をしなければならないかと言うと、それは一人で生きていく才能が無いからなんだ。人は才能の限界を知ると、自らに苦痛を与えて、満たされなかった承認欲求を昇華させようとする。
絶望を燃料に変えて
満員電車とは、個では生きていけない、生きる才能がない人々が、自らを正当化するために走らせるウエスタンリバー鉄道なんだよ。
内心では満員であること、そして決められた場所で拘束されることを好んでやっている。まるでドラクエのレベル上げのようにね。
そして、苦痛を訴えることで価値を底上げしている。苦痛のレベルが上がり共感が増えれば一石二鳥、いや三鳥の効果がある。
秀でた才能がある人には理解できないけれど、満員電車は気持ちが良いんだ。寂しいとき、心が汚れてしまったとき、才能に限界を感じてしまったとき、あの列車は走り出す。
満載の絶望を燃料に、満員電車は走り出すんだ。