ちるろぐ

ここが僕のアナザースカイ

伊藤計劃著の『虐殺器官』を読んだよ

伊藤計劃(いとうけいかく)と読むんですね。各所で絶賛されていたので、さっそく読んでみました。


あらすじ

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9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大量虐殺が急激に増加していた。
米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の影に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう……彼の目的とはいったいなにか? 大量虐殺を引き起こす“虐殺の器官”とは? ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化!


感想

著者の伊藤計劃さんについては、はてなブログを書いていた人くらいの予備知識しかなかったのですが、まさかこれほど面白いとは予想外でした。

読み始めると、まず、主人公がアメリカ軍の特殊部隊に所属する、生粋の米国籍ということで、果たして日本人がアメリカ人のメンタリティをどう書く(書ける)のだろうか、という不安がよぎりました。

しかし、読み進めるうちに、そんな不安は軽くふっ飛ばされます。むしろ、実在の人物のように、グイグイと心を鷲掴みにされてしまいました。また、なぜ主人公が米国籍でなければならなかったのか、という伏線にもなっています。

また、世界観がとてもリアルです。架空のテクノロジーで、この物語がフィクションだと思い出させてくれるのですが、それ以外の登場人物や背景には、圧倒的な現実感があって、正直恐怖でもあります。

それもそのはずで、著書は2010年に発行されているのですが、その後の2015年には、パリ同時多発テロ、イスラム国の事件などもあり、現実の世界と虐殺器官はシンクロしていくのです。

テクノロジーは、僕らの暮らしを豊かにすると同時に、未知の脅威にもなることを、圧倒的なリアリティを持って迫ってきます。

個人的に印象に残ったのは、物語りの敵でもあり、もう一人の主人公である、ジョン・ポールのセリフです。

すこし抜粋してみます。

殺人や強奪や強姦が、生存のためのニーズから発生したものだとすれば、他人を思いやり、他人を愛し、他人のために自分を犠牲にすることもまた、進化のニーズによって生まれたものだ。

われわれのなかには、それなりに生存の必要性によって発生したはいいが、競合しあっている感情のモジュールがいくつかあるんだよ


適者生存の法則というか、人類は集団の中で平和的に協調し進化してきた、という説には、説得力がありますよね。しかし、その逆もまた真なり、なのです…。

つまり、僕らの感情にも、虐殺のモジュールが刷り込まれている可能性がある、という、なんとも恐ろしい予言です。


影響を受けました

本書を読み終わって、このところ、僕の暮らしに、充実感というか、何かが足りない…、と感じていたのですが、それは、もしかしたら、無差別な虐殺なのかもしれません。

なので、今日からブログのテーマを虐殺にしようと思います。手始めに僕のコールサインを「ジョン・チルド・ポール」に変えました。今後は、ブログで世界を変えていきます。

みなさんも、虐殺器官を読んで、虐殺のモジュールを呼び起こしましょう。