許せない価値観の相違

ランニングで膝を壊してから、かれこれ一週間が経った。まだ、よちよち歩きだけど、なんとか痛みも引いて、順調に回復しているよ。

ところが、今度は、首と、くるぶしの付け根が痛くなってしまった。ぎっくり腰をやってしまったときもそうだけど、関節痛を患うと、患部とは別のところが痛くなるのは、よくある事で、そんなのを繰り返しながら、徐々に回復していく。

ただ、首周りは、これ見よがしに湿布を貼るというのも、ちょっと人目をはばかるので、不快な痛みを感じながらも、放置するしかない。

やれやれ。

朝からそんな、ブルーな気分を抱えながら、過ごしていたら、彼女と衝突してしまった。


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彼女は、とにかく料理をしまくるので、生ゴミの量がすごい。僕たち2人分だけじゃなく、子供や孫、ご近所さんの分まで作るから、2人なのに、ファミリーレベルの生ゴミを出すんだよ。

それをしょっちゅう、捨てに行くのは、僕の役目だから、僕は、その生ゴミを見るたびに、正直イラついている。

子供や孫はともかく、近所の人まで、そんなにしょっちゅう空腹のはずもないから、ほどほどにしようよと、過去にも幾度か、やんわりと諫めたのだけど、まるで聞く耳を持たない。

彼女はなぜか、自分の作った料理は、いつだって万人を幸福にする、というような、謎の信念を持っているらしく、それを否定すると、火に油というか、逆に猛然と料理を始めてしまうんだよ。

じゃあ、好きにしていいけど、生ゴミまで自分で処理してね、と言うのだけど、一向に捨てに行く気配がない。どうも、ゴミ捨ては、下働きである君の(僕の)役目であるから、といった風情で、どんなに生ゴミが満タンになろうとも、テコでも動かない。

僕は、ちょっとしたゴミでも、すぐに気になってしまう性質だから、ましてや、生ゴミを許せるわけもなく、さりとて、そんなに頻繁にゴミ捨てにも行きたくないから、とにかく、作る量を減らして、ゴミを減量してと、何度も懇願した。


今朝もまた、3〜4日分の大量の生ゴミが生産されており、いよいよ捨てに行かねばなるまいと、その旨を彼女に伝えた。

しかし、この足である。歩くのさえやっとなのに、それでも、重い生ゴミを捨てなきゃいけないの?

と言うか、なぜに絶え間なく生産するんだろう。

そんな、理不尽な疑問に苛まれているところに、彼女がカートなど持って来くるものだから、僕はキレてしまった。

さも、「このカートに積めば、その足でも余裕でしょ?」と言わんばかりの、賢しげな態度に、本気で怒りを感じて、カートの中に、生ゴミの袋を思い切り投げつけてしまったんだよ。

僕が、生ゴミを、あんまり勢いよく投げたせいで、彼女は、カートと一緒に2〜3歩後によろめいてしまった。

しかし、向こうも、せっかく親切で持ってきたカートと、僕の人間の小ささに腹を立てたらしく、カートの棒をグッと握り直すと、反対にあったドアに向けて、カートを思い切りぶつけて、キッチンへ飛び込んでしまった。

僕は、痛む足をずりずりしながら、ソファーにどっかりと座り込んで、近くにあった葉っぱに火をつけ、煙を大きく吸い込んで、勢いよく吐き出した。

キッチンでは、何かを蹴飛ばす音や、ステンレスのボウルを乱暴に叩き付ける音がしていたけど、僕は1ミリも悪くないぞ。悪いのは、注意しても言うことを聞かない、彼女の方なんだ。

けっきょく、僕らは、数分後には仲直りしていた。ごめんなさいと謝った。根本的には、何も解決していないのだけど。

彼女とは、20年、一緒に暮らしてきたけど、僕には、彼女のすることで、許せない事がいくつかある。決定的な価値観の相違もある。永遠にわかり合えない、そんな種類の溝がある。

しかし、それでも一緒に歩んで来たのは、妥協でも、あきらめでもなく、強いて言うなら、相手の意思を尊重することだろうか。またやってるよ…、と思いつつも、それが彼女の喜びなら、好きにやらせようと思う。

これからも、ずっと。